ピアノ歴20年以上のWEBライターです。コンクールや受験、さらにピアノ指導経験を活かした記事作成を行っています。
目次
- 作曲当時の歴史的背景に迫ろう!
- 「2つのアラベスク」の楽曲解説
- アラベスク第1番ホ長調を解説
- アラベスク第2番ト長調を解説
- 難易度(レベル)はどれくらい?
- 目安としては何年生?
- 2つのアラベスクと同レベルの曲は?
- メンデルスゾーン〜春の歌〜
- ショパン〜小犬のワルツ〜
- スカルラッティ〜ソナタハ長調〜
- 2つのアラベスクよりも難易度が高い曲は?
- モーツァルト〜ロンドニ長調〜
- シューマン〜トロイメライ〜
- ラフマニノフ〜前奏曲嬰ハ短調op3-2〜
- 2つのアラベスクよりも難易度が低い曲は?
- ベートーヴェン〜エリーゼのために〜
- ショパン〜ポロネーズト短調〜
- ブルグミュラー〜アラベスク〜
- 練習のコツは?
- 【第1番】練習の際に気をつけたい点!
- 3連音のアルペジオ
- ペダリング
- 左右2:3の攻略法
- 細かいパッセージ
- 【第2番】練習の際に気をつけたい点!
- 16分音符の3連音
- 和音奏法
- 楽譜はこちらから
- 【第1番】楽譜とおすすめ動画
- 【第2番】楽譜とおすすめ動画
- 【番外編】アラベスクの名盤をご紹介
- 辻井伸行〜THE BEST〜
- ミシェル・ベロフ〜ドビュッシーピアノ作品集3〜
- まとめ
ドビュッシーの代表的なピアノ曲『2つのアラベスク』は、フランス印象派音楽の先駆けと言える楽曲です。
特に、有名な第1番はピアノ学習者にとっても憧れの一曲で、いつか弾いてみたいと思う方も多いでしょう。
独特なハーモニーと柔らかい音色が印象的なドビュッシーのアラベスクは、ピアノの基本的なテクニックはもちろん、弾き手の表現力が問われる難しい楽曲です。
筆者もドビュッシーのアラベスクを練習した経験がありますが、なかなかイメージ通りの音色にならず苦戦したことを思い出しました。
今回の記事では、ドビュッシーのピアノ曲『2つのアラベスク』について楽曲や難易度を解説いたします。
さらに、練習のコツや楽譜もご紹介しますので、参考にしていただけると嬉しいです。
作曲当時の歴史的背景に迫ろう!
『2つのアラベスク』を作曲したクロード・ドビュッシーは、19世紀後半から20世紀初頭に活躍した作曲家です。
和声や音階などの形式に忠実な作曲法から離れ、自由な発想で作品を生み出したドビュッシーは、クラシック音楽の発展に大きく貢献しました。
ドビュッシーが『2つのアラベスク』を作曲したのは、1888年から1891年。
ピアニストから作曲家に転向し、26歳の時に着手したと伝えられています。
1888年はドビュッシーが初めてバイロイト音楽祭に行った年で、『2つのアラベスク』をはじめ、多くのピアノ小品や歌曲を作曲しています。
ちなみに、バイロイト音楽祭とはドイツの地方都市「バイロイト祝祭劇場」で行われる音楽祭です。
主にワーグナーのオペラや楽劇が演奏され、ドビュッシーは2度訪れています。
1891年、パリ万国博覧会でドビュッシーがガムラン音楽に触れたことが大きな転機となり、彼の音楽性にも影響を与えました。
この時期に完成した『2つのアラベスク』は、ピアノの小品曲でありながらドビュッシーの音楽において重要な作品となっています。
「2つのアラベスク」の楽曲解説
まず「アラベスク」とは、音楽用語ではなくアラビア風の建築装飾における幾何学模様や唐草模様という意味です。
ドビュッシーは、この「アラベスク」をバッハの装飾的な音楽と照らし合わせ、あらゆる美的イメージから作曲に結びつけています。
その結果、ドビュッシーは独特な和声を用いて作曲の概念を覆すような作品を多く残してきました。
その先駆けと言える『2つのアラベスク』は、ピアノの小品でありながら若いドビュッシーのエネルギーがみなぎる楽曲になっています。
アラベスク第1番ホ長調を解説
4分の4拍子、Andantino Con moto(やや遅く動きをもって)と指定されている第1番ホ長調。
ドビュッシーの初期の作品にはロマン派音楽の片鱗があり、アラベスク第1番もその一つです。
冒頭の流れるような3連音からメロディラインが浮かび上がる作風は、シューマンを彷彿とさせます。
一方で、ホ長調の主和音(ミ・ソ#・シ)で始まらないというドビュッシーらしさもあり、聞き手に独特な印象を与えていると言えますね。
3部形式の第1部は、さまざまなパートに分かれた合唱のような特性があり、メロディラインが入れ替わっていきます。
自由に動くメロディとそれを支えるハーモニーが調和しながら、第1部から第2部に引き継ぎます。
第2部はゆったりとしたメロディの掛け合いが印象的です。
力強さと繊細さのコントラストも素晴らしく、曲全体を引き締めています。
そして、再び冒頭のモチーフが現れ第3部に入り、第1部の主題を再現しつつ、コーダから軽やかなパッセージを伴って曲を閉じます。
アラベスク第2番ト長調を解説
4分の4拍子、AllegrettoScherzando(やや速く戯れるように)と指定されている第2番ト長調。
第1番とは異なり、軽快で妖精が飛び跳ねているようなイメージの楽曲です。
3部形式で構成され、冒頭の軽やかなパッセージによる序奏で始まります。
第1部は、16分音符の3連音とメロディの掛け合いが続き、長いフレージングが特徴的です。
第2部はスタッカートが多用される上行音型が現れ、和声的な展開を見せます。
ドビュッシー初期の作品ならではの、難解なハーモニーがないシンプルな展開と言えるでしょう。
第3部は、第1部の再現とともにクライマックスに向かっていきます。
幻想的なメロディで緊張感を高めますが、最後は違和感なく終わるところがドビュッシーの若さゆえの手法に感じられますね。
難易度(レベル)はどれくらい?
ドビュッシー『2つのアラベスク』の難易度は、中級〜上級です。
全音ピアノピースでは中級を示す「C」に分類され、ヤマハのぷりんと楽譜では原曲が「上級」に分類されています。
目安としては何年生?
さらに、小学校高学年〜中学生向けのコンクールの課題曲として、ドビュッシーの『2つのアラベスク』が指定されることも多いです。
このことから、ドビュッシー『2つのアラベスク』は中級レベル以上の楽曲であり、ハノンやツェルニー30番練習曲などを習得していれば弾けると考えられます。
(個人差あり)
2つのアラベスクと同レベルの曲は?
ここでは、ドビュッシー『2つのアラベスク』と同レベルで、スタイルが異なるおすすめの楽曲を3曲ピックアップしました。
メンデルスゾーン〜春の歌〜
「春の歌」は、ロマン派音楽の作曲家であるメンデルスゾーンの『無言歌集第5巻』に収められている楽曲です。
穏やかな曲調と装飾的なメロディが美しく、ロマン派音楽の象徴と言えます。
ドビュッシーの『2つのアラベスク』とは対照的な作品なので、表現力の幅を広げるためにも挑戦してほしい曲ですね。
ショパン〜小犬のワルツ〜
ピアノの詩人と呼ばれたショパンの代表曲「小犬のワルツ」は、自分のしっぽを追いかける子犬の様子からインスピレーションを得たというエピソードが有名です。
躍動的な部分と優雅さが調和したロマン派音楽の王道と言える曲で、ドビュッシー『2つのアラベスク』とは異なる魅力があります。
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スカルラッティ〜ソナタハ長調〜
バロック時代の作曲家スカルラッティのソナタは、古典のソナタ形式が確立する前の作品です。
そのため、2部形式のシンプルな構成のソナタが多く、ハ長調もその一つ。
軽快でリズミカルな曲調なので、ドビュッシーの「アラベスク第2番」に通ずる楽曲と言えるでしょう。
2つのアラベスクよりも難易度が高い曲は?
ドビュッシー『2つのアラベスク』よりも難易度が高い曲で、中級以上のおすすめの曲をご紹介します。
ピアノレベルのステップアップにつながる3曲をピックアップしました。
モーツァルト〜ロンドニ長調〜
古典派音楽の王道であるモーツァルトの「ロンドニ長調」は、ソナチネからソナタに進む段階の中級レベルの楽曲です。
基本的な音階奏法や美しい装飾音を弾くテクニックが必要で、中級から上級にステップアップするための課題としておすすめ。
さらに、ドビュッシーのピアノ曲とは異なる曲調なので、併用して練習するとレパートリーの幅が広がります。
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シューマン〜トロイメライ〜
シューマンの代表曲『子供の情景』の第7曲「トロイメライ」は、単体で演奏されることも多い有名な楽曲です。
夢想という意味がある「トロイメライ」は、穏やかで心地よいハーモニーが特徴的。
幻想的なドビュッシーの「アラベスク第1番」と、なんとなく雰囲気が似ていると思いませんか?
ラフマニノフ〜前奏曲嬰ハ短調op3-2〜
ロマン派後期の作曲家で、ピアニストとしても有名なラフマニノフの「前奏曲嬰ハ短調」は、『幻想的小品集оp3』に収められています。
ピアノの音域を活かした壮大な和音による導入部から躍動的な中間部など、テクニカルでありながら音楽性豊かな楽曲です。
中級から上級の曲なので、レベルアップを目指したい方におすすめですよ。
2つのアラベスクよりも難易度が低い曲は?
ここからは、ドビュッシー『2つのアラベスク』よりも難易度が低い3曲をご紹介します。
ベートーヴェン〜エリーゼのために〜
ピアノ学習者にとって憧れの一曲と言える『エリーゼのために』は、初級から中級にステップアップする段階に最適な楽曲です。
「アラベスク」より難易度が低いとはいえ、ピアノの基本的なテクニックが求められる曲なので併用をおすすめします。
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ショパン〜ポロネーズト短調〜
ショパンが幼い頃に作曲した『ポロネーズト短調』は、ロマン派音楽の魅力が詰まった作品です。
ドビュッシー『2つのアラベスク』はロマン派の色が濃い作品ですが、ショパンとの違いを感じながら練習するのも良いですね。
ブルグミュラー〜アラベスク〜
ブルグミュラー25の練習曲の中でも有名な「アラベスク」は、初級レベルの楽曲です。
ハノンやツェルニー100番などの教本と併用して練習する方も多いでしょう。
練習のコツは?
ここからは、ドビュッシー『2つのアラベスク』の練習のコツと注意点をご紹介していきます。
2曲に共通するのは、練習の際にメトロノームを使うこと。
ドビュッシーのピアノ曲はテンポを安定させるイメージが低いですが、練習にはメトロノームを使ってほしいのです。
なぜなら、テンポを揺らしすぎるとリズムが崩れたり、ペダリングにも影響があるからです。
まずは、安定したテンポ感を身につけて、その中でテンポを揺らす弾き方を覚えていきましょう。
【第1番】練習の際に気をつけたい点!
第1番の難しいところは、3連音の弾き方とペダリングです。
練習する際はテクニックごとに分けて、自分が苦手な部分を強化してください。
3連音のアルペジオ
冒頭の3連音によるアルペジオは、まずペダルを使わずに練習してみましょう。
指使いを決めて、一つ一つの音をきちんと鳴らす練習から始めると良いです。
指使いのヒントとして、冒頭のアルペジオを和音にして弾いてみてください。
この時、鍵盤上のポジションを定めて、指が適切な位置に置けるかを確認します。
ここで避けたいのは、黒鍵を親指で弾くこと。
手の正しいポジションが崩れたり、音が飛び出すリスクがあるため注意が必要です。
指使いが決まったら、楽譜通りに弾いてみましょう。
まだペダルを踏まず、指をしっかり動かす練習や指だけでなめらかに弾く練習を続けます。
左手から右手につなぐ際に、音がデコボコにならないよう自分の耳で聞き取ることも大切ですね。
音の粒を揃えて弾くことを習得したら、いよいよ音色作りです。
ドビュッシーのピアノ曲特有の繊細で柔らかい音色を目指して、ペダルを効果的に使ってみましょう。
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ペダリング
ペダリングは、演奏の善し悪しを左右すると言っても過言ではありません。
これは、どのピアノ曲にも共通するのですが、ドビュッシーの作品は特にペダリングが重要です。
「アラベスク第1番」では、全体的にペダルを使用します。
楽譜通りに踏めば良いのですが、踏み込みの深さやタイミングが難しいです。
まずは、片手で弾きながらペダルを踏む練習を試してみてください。
特に、伴奏を担う左手とペダルのタイミングが重要で、音が濁りすぎないように注意しましょう。
さらに、通して弾けるようになったら、自分の音を録音して客観的に聞いてみるのも効果的ですよ。
左右2:3の攻略法
6小節目からは、左手が8分音符2つに対して右手が3連音になっています。
これは、左右で異なる拍子を弾くようなイメージです。
例えば、左手2拍子と右手3拍子を同時に弾くなど。
筆者もこのような弾き方が苦手で、習得するまでに時間がかかりました。
私が最初に試したのは、ピアノで弾かずに手で机を叩いてリズム感を叩き込むこと。
体で覚えることで、ピアノ演奏に活かせることもあるのです。
理論的に解決したい時は、音を増やして左右を合わせるタイミングを見つける方法がありますが、混乱しやすいので要注意。
細かいパッセージ
曲の途中に、弾きにくい細かいパッセージが出てきます。
3連音と同じく、適切な指使いを決めてから練習してください。
難しい箇所を部分的に取り出して、スタッカートで弾いたり符点リズムに変換して練習すると効果的ですよ。
【第2番】練習の際に気をつけたい点!
「アラベスク第2番」の難しい部分は、16分音符の3連音と和音奏法です。
全体的に軽快なタッチで弾くため、指先の瞬発力を鍛える必要があります。
16分音符の3連音
細かい3連音の失敗例として多いのは、タッチが不安定で音がくっついてしまうケースです。
トリル(装飾音)のように音が軽やかに聞こえるように、まずはすべての音をスタッカートで弾く練習から始めてみましょう。
続いて、各音にアクセントをつけて弾く練習もおすすめです。
特に、弱い小指や薬指の瞬発力を鍛える訓練になります。
練習時のテンポはゆっくりで大丈夫なので、指先がしっかり鍵盤を捉えているか確認しながら練習してくださいね。
そして、最も難しいのは左手で3連音を弾く部分です。
練習方法は右手と同じですが、弾きにくいので時間をかけて練習すると良いです。
和音奏法
「アラベスク第2番」には、和音をフォルテ(強く)やピアノ(弱く)で弾く箇所がたくさんあります。
そのため、和音の強弱によって、指や手首、さらに腕の使い方も工夫しなければなりません。
さらに、音域が広く手が届かない和音はアルペジオ奏法で弾きます。
最も難しいのは、ピアニッシモ(極めて弱く)と指示された和音奏法です。
鍵盤をなでるようなタッチで、指先に余計な力を入れずに柔らかい音色で弾いてみましょう。
アルペジオ奏法が指示されている箇所は、1音ずつ重ねながら音が飛び出さないように慎重に練習してください。
さらに、和音をスタッカートで弾く場合は、1番上の音を強調するように弾くと良いです。
ただし、手首を傾けすぎると音が抜けてしまうので、手のポジションに気をつけましょう。
楽譜はこちらから
ここでは、ドビュッシー『2つのアラベスク』の楽譜やおすすめの動画をご紹介いたします。
【第1番】楽譜とおすすめ動画
「アラベスク第1番」の演奏動画(上)と楽譜つき(下)の動画になります。
楽譜を見ながら音源を聞くと、譜読みがしやすいのでおすすめです。
【第2番】楽譜とおすすめ動画
続いて「アラベスク第2番」の演奏動画と楽譜をご紹介します。
第1番よりもマイナーですが、ドビュッシーの魅力が詰まった作品なのでおすすめですよ。
【番外編】アラベスクの名盤をご紹介
最後に、ドビュッシー『2つのアラベスク』のおすすめCDをご紹介します。
有名なピアニストが奏でるアラベスクの名盤をピックアップしました。
辻井伸行〜THE BEST〜
今や世界的なピアニストとして活躍する辻井伸行さんのピアノ名曲集です。
彼の持ち味である優しく語りかけるような柔らかい音色は、ドビュッシーの魅力を十分に引き出しています。
ミシェル・ベロフ〜ドビュッシーピアノ作品集3〜
ドビュッシーのピアノ曲を全収録したことで知られるミシェル・ベロフの名盤です。
右手の怪我を乗り越え見事に復活した彼の演奏は、研ぎ澄まされた音色と奥深さが増しています。
まとめ
今回は、ドビュッシーの名曲『2つのアラベスク』の楽曲や難易度を解説するとともに、練習のポイントや楽譜をご紹介してきました。
ドビュッシーが26歳の時に作曲した『2つのアラベスク』は、ロマン派音楽の片鱗を残しつつ彼の自由な発想が盛り込まれた楽曲と言えますね。
演奏時間5分ほどの小品ですが、ドビュッシーの音楽を学ぶ第1歩として『2つのアラベスク』を練習してみてください。
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