ピアノ歴20年以上のWEBライターです。コンクールや受験、さらにピアノ指導経験を活かした記事作成を行っています。
目次
- そもそもソナタとは?
- ソナタには形式があるって知ってた?
- ソナタとソナチネの違いは?
- ソナチネの有名な作曲家や楽曲
- クレメンティ『ソナチネ』
- カバレフスキー『ソナチネ』
- ラヴェル『ソナチネ』
- 【モーツァルト・ベートーヴェン】ソナタの名曲は?
- 【一覧表】モーツァルト・ベートーヴェンのソナタは全何作?
- モーツァルトの有名なソナタ5曲をご紹介
- ピアノソナタ第11番イ長調K.331「トルコ行進曲」
- ピアノソナタ第8番イ短調K.310
- ピアノソナタ第15番ハ長調K.545
- ピアノソナタ第18番ニ長調K.576
- 2台ピアノのためのソナタニ長調K.448
- ベートーヴェンの有名なソナタ5曲をご紹介
- ピアノソナタ第14番嬰ハ短調「月光」Op.27-1
- ピアノソナタ第23番ヘ短調「熱情」Op.57
- ピアノソナタ第17番ニ短調「テンペスト」Op.31-2
- ピアノソナタ第24番嬰ヘ長調「テレーゼ」Op.78
- ピアノソナタ第30番ホ長調Op.109
- まとめ
ピアノを習っていると必ず耳にするソナタやソナチネ。 私自身、子どもの頃は曲のタイトルだと思って弾いていました。
上級のピアノソナタを練習する頃には、ソナタ形式を学びながら楽曲がどのように作られているのかを知りました。
そして、クラシック音楽の多くの作曲家が「ピアノソナタ」を残しており、時代によって楽曲構成も変化しています。
そこで今回の記事では、ピアノの曲に多いソナタやソナチネの違いや形式、さらにおすすめしたいピアノソナタをご紹介します。
そもそもソナタとは?
今ではソナタは、ピアノ独奏曲をはじめヴァイオリン・フルート・チェロなど、様々な器楽曲の名称で使われています。
一方で、ロマン派以降には、リストのピアノソナタに見られる単一楽章の大規模なソナタや作曲家独自の形式を交えた作品が誕生しました。
ソナタには形式があるって知ってた?
ソナタは多楽章で構成される楽曲のことで、その曲を構成する形式が「ソナタ形式」と呼ばれます。
ソナタ形式は、作文に例えると「起承転結」のようなもので、序奏・提示部・展開部・再現部(結尾部)で構成されます。 古典ソナタの第1楽章に多く、ハイドンやベートーヴェン、モーツァルトのピアノソナタが代表的。
序奏・提示部 | 主調で現れる第1主題、転調による第2主題が提示される。 |
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展開部 | 主題を変形させたり激しく転調したり、緊張感のある展開をみせる。 |
再現(結尾)部 | 再び第1・2主題が現れ、比較的シンプルな進行で曲を閉じる。 |
規模が大きいベートーヴェンのソナタなどでは、コーダと呼ばれる結尾部を経て終止するパターンが多いです。 また、ソナタ形式に従わない構成でありながらソナタと名付けられた楽曲もあります。
【例】- ベートーヴェン・ソナタ「月光」「テンペスト」
- ショパン「ピアノソナタ」
ソナタとソナチネの違いは?
ソナタとソナチネの大きな違いは、楽曲の規模や構成です。ソナチネは、ソナタを簡略化した小さな楽曲となっています。 『ソナチネアルバム』や『ソナタアルバム』といったピアノ教本を使う際は、ソナチネを先に習ったと思います。
ソナタ | ソナチネ |
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ソナチネの有名な作曲家や楽曲
ここからは、有名なソナチネを残した作曲家やおすすめの曲をご紹介します。
クレメンティ『ソナチネ』
イタリア出身の作曲家・クレメンティが残した『6つのソナチネ作品36』は、ピアノ初級者向けの楽曲です。 ソナチネアルバムに掲載されているので、ピアノレッスンで習った方も多いでしょう。
ソナタ形式を学ぶ第1歩として、クレメンティのソナチネは重要な役割を果たしています。
- ハ長調Op.36-1
- ト長調Op.36-2
- ハ長調Op.36-3
- ヘ長調Op.36-4
- ト長調Op.36-5
- ニ長調Op.36-6
カバレフスキー『ソナチネ』
こどものためのアルバムでおなじみのカバレフスキーは、2つのソナチネ『第1番ハ長調Op.13-1』と『第2番ト短調Op.13-2』を残しています。 圧倒的に第1番が人気で、ピアノ発表会やコンクールで演奏されることが多いです。
3楽章からなるソナチネには、カバレフスキーならではのテンポ感やリズムがあり、クレメンティとは異なる演奏技術が求められます。
ラヴェル『ソナチネ』
フランスの作曲家・ラヴェルの名曲『ソナチネ』は、これまでの解説からかけ離れた異色の作品と言えます。
まず、演奏の難易度が高く上級者向けであること。 近・現代スタイルのソナチネは、和声進行やペダリングも複雑化しています。 一方で、ピアニストが好んで演奏することが多い楽曲でもあります。
- 第1楽章:神秘的な旋律が流れるソナタ形式
- 第2楽章:メヌエット。不規則な構造が特長的
- 第3楽章:変拍子が現れる独特でリズミカルな構成
【モーツァルト・ベートーヴェン】ソナタの名曲は?
モーツァルトやベートーヴェンは、古典派のソナタ形式を確立し多くのピアノソナタを残した作曲家です。
ここからは、古典ソナタでありながら作風が異なるモーツァルトとベートーヴェンのソナタをピックアップしてご紹介します。
【一覧表】モーツァルト・ベートーヴェンのソナタは全何作?
ほぼ同じ時代に活躍したモーツァルトとベートーヴェン。 ピアノソナタは、モーツァルト【全18曲】ベートーヴェン【全32曲】が残されています。
モーツァルト(1756年ザルツブルク) | ベートーヴェン(1770年ドイツ) |
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モーツァルトの有名なソナタ5曲をご紹介
ここからは、モーツァルトのピアノソナタ全18曲の中からおすすめの名曲と2台ピアノのソナタをご紹介します。
ピアノソナタ第11番イ長調K.331「トルコ行進曲」
モーツァルトのピアノ曲で最も有名な「トルコ行進曲」は、単独で演奏されることも多いですが、実はピアノソナタ第11番の第3楽章に位置づけられます。
第1楽章は、ピアノソナタには珍しい緩徐楽章。 主題と6つの変奏曲からなり、心地よく揺れ動く8分の6拍子で始まります。 第6変奏で軽快な4分の4拍子に変わり、第1楽章を締めくくります。
第2楽章のメヌエット(4分の3拍子)を経て、第3楽章「トルコ行進曲」に入ります。 4分の2拍子、ソナタでありながらトルコ行進曲はロンド形式で構成。
打楽器のような左手の伴奏にのせて、おなじみのメロディが軽快に奏でられます。
ピアノソナタ第8番イ短調K.310
モーツァルトのピアノソナタの中で数少ない短調のソナタです。 悲愴感が漂う第1楽章は、左手の和音と絶え間なく流れる16分音符のパッセージが特長的。
第2楽章は、穏やかなメロディが美しい緩徐楽章です。 感情的な旋律の展開部を経て再現部が現れ、第3楽章のPrestoに繋ぎます。
第3楽章もトルコ行進曲と同じくロンド形式で構成され、疾走感のある楽曲となっています。
ピアノソナタ第15番ハ長調K.545
モーツァルト自身が「初心者のための小さなソナタ」と著した通り、ピアノソナタの中では易しく弾きやすい楽曲です。
第1楽章と第2楽章はソナタ形式。そして、第15番も第3楽章がロンド形式で構成されています。 古典ソナタの象徴と言えるアルベルティバスの伴奏形や、シンプルでありながらモーツァルトらしい転調が印象的なソナタと言えます。
ピアノソナタ第18番ニ長調K.576
モーツァルトが作曲した最後のピアノソナタが、第18番ニ長調です。 第1楽章は、冒頭のユニゾンによる主題がカノン形式で現れたり、複雑な転調や16分音符のパッセージなど、演奏も難しい楽曲となっています。
第2楽章はバロック音楽を彷彿とさせる構成で、即興的な旋律やパッセージが特長的です。 そして舞曲風の第3楽章は、3連符の分散和音を中心とする楽曲構成。
2台ピアノのためのソナタニ長調K.448
『のだめカンタービレ』でおなじみ、2台ピアノのためのソナタニ長調は、モーツァルトの作品の中で唯一の2台ピアノ用の楽曲です。
力強いユニゾンで始まる第1楽章、表情豊かに奏でられる第2楽章、躍動感のある第3楽章からなり、モーツァルトらしい軽快さや穏やかさが際立ちます。
また、モーツァルトが弟子のために作曲したと言われ、スケールやアルペジオといった基本的なテクニックも盛り込まれています。
ベートーヴェンの有名なソナタ5曲をご紹介
続いて、ベートーヴェンのピアノソナタからおすすめの5曲をご紹介します。 3大ピアノソナタ「悲愴」「月光」「熱情」は有名ですが、他にも美しい曲がたくさんあります!
ピアノソナタ第14番嬰ハ短調「月光」Op.27-1
3大ピアノソナタの一つ「月光」は、ベートーヴェンが30歳の時に作曲したと伝えられています。
第1楽章には珍しい『Adagio』で始まり、終始途切れない3連符と悲愴感のあるメロディが印象的。 第2楽章は、スタッカートとレガートのコントラストが特長のスケルツォ風です。
第3楽章『Presto Agitato』では、アルペジオの上昇やオクターブ、和音スタッカートなど、技術的にも難しい構成になっています。 カデンツァ風のパッセージから壮大なクライマックスを迎え、最後は力強く締めくくります。
ピアノソナタ第23番ヘ短調「熱情」Op.57
「月光」と並ぶ3大ピアノソナタの一つ「熱情」は、ベートーヴェン中期の最高傑作と言われています。 また、産業革命による鉄の普及でピアノの強度や音域が広がり、楽曲にも存分に活用されています。
第1楽章と第3楽章はソナタ形式、第2楽章は変奏曲で構成され、強弱の差や広い音域のパッセージ、鋭いリズムなど演奏技術も高度になります。
第1楽章では有名な交響曲「運命」のモチーフが使われ、全体的に重要な役割を担っています。
ピアノソナタ第17番ニ短調「テンペスト」Op.31-2
「テンペスト」の愛称で知られる第17番ニ短調は、幻想的な第1楽章・展開部が省略された第2楽章・無窮動に動く第3楽章で構成されたピアノソナタです。
第1楽章冒頭は『Largo』の重たい雰囲気。 しかし、すぐに『Allegro』の主題が現れ緊張感を高めます。 展開部・再現部も同じ構成で、静かに曲を閉じます。
コラール風の第2楽章を経て、第3楽章8分の3拍子に入ると、ドラマチックな旋律や技巧的なパッセージが繰り返されます。
ピアノソナタ第24番嬰ヘ長調「テレーゼ」Op.78
ベートーヴェンの大作「熱情」の完成から約4年後に作曲したソナタ「テレーゼ」は、第1楽章と第2楽章で構成された珍しい作品です。
第1楽章は、『Adagio Cantabile』の優美な導入部から始まり、『Allegro』の主題が現れます。 ソナタ形式とロンド形式が混ざったような第2楽章は、強弱の差や独特なリズムなど、異彩を放つ楽曲になっています。
ピアノソナタ第30番ホ長調Op.109
ベートーヴェン後期のピアノソナタの中でも美しい第30番は、ソナタ形式の第1楽章・第2楽章、変奏曲形式の第3楽章で構成されています。
初期のピアノソナタにはない、自由な発想やロマン派に通ずる楽想が盛り込まれた第30番は、第1・2楽章がコンパクトにまとまっています。
一方、第3楽章は主題と6つの変奏曲からなり、壮大なクライマックスに向かって展開する大作となっています。
まとめ
今回は、よく耳にするピアノのソナタやソナチネについて解説してきました。 楽曲を構成するソナタ形式は、現代音楽の基礎と言っても過言ではありません。
そして、クラシック音楽には多くのソナタやソナチネがあり、いろいろな演奏家によって守られてきました。
ぜひ、おすすめのピアノソナタを聴いてみてください!
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