ピアノ歴20年以上のWEBライターです。コンクールや受験、さらにピアノ指導経験を活かした記事作成を行っています。
目次
- 「エリーゼのために」の歴史背景とは?
- エリーゼの正体は?
- テレーゼ・マルファッティ
- エリーザベト・レッケル
- 「エリーゼのために」の楽曲解説!
- 楽曲解説
- 難易度(レベル)はどれくらい?
- 教本レベルや年齢の目安は?
- 「エリーゼのために」と難易度が同じ曲を3曲ご紹介!
- ショパン~ワルツOp.34-2~
- シューベルト~スケルツォ変ロ長調~
- スカルラッティ~ソナタニ短調~
- 「エリーゼのために」よりやさしい曲を3曲ご紹介!
- ボッケリーニ~メヌエット~
- ネッケ~クシコス・ポスト~
- ゴセック~ガヴォット~
- 「エリーゼのために」より難しい曲を2曲ご紹介!
- チャイコフスキー~トロイカ~
- ショパン~ワルツ華麗なる大円舞曲Op.18~
- 練習のコツは?
- 最初に「エリーゼのために」の弾き映えポイントを抑えよう
- 23小節~35小節・ヘ長調(第2主題)
- 52小節~82小節・イ短調(第3主題)
- 練習の際に気をつけたい点!
- テンポを安定させる
- ペダルを踏むタイミング
- 左右の音量のバランス
- まとめ~名曲「エリーゼのために」を弾いてみよう♪~
ベートーヴェンの作品の中で最も有名なピアノ曲といえば「エリーゼのために」です。 冒頭の寂しげなフレーズは、誰もが一度は聞いたことがあると思います。
また「エリーゼのためにが弾けるようになりたい!」と憧れたり、実際にピアノの発表会で弾いたことがある方も多いでしょう。 私自身も、ピアノを習い始めた頃この曲に憧れました。
エリーゼのために」は演奏時間が短い小品ですが、さまざまな要素が入った音楽的にも美しい曲です。
そこで今回は、ベートーヴェン作曲「エリーゼのために」の楽曲解説や歴史背景、練習のコツなどを徹底解説いたします。
「エリーゼのために」の歴史背景とは?
「エリーゼのために」を作曲したベートーヴェンは、クラシック音楽の発展において偉大な功績を残した人物です。 そのことから「楽聖」と呼ばれ、後世の音楽家にも多大な影響を与えました。
そして、ベートーヴェンが39歳の頃に作曲した「エリーゼのために」は、1810年に完成。 しかし、ベートーヴェンが生きている間に出版されず、1867年に学者や音楽家によって世に知られることになりました。
「エリーゼのために」が作られた1810年は、滞在中のウィーンがナポレオン戦争の影響を受け、市民の大半が街を出ていきました。
戦地となったにもかかわらず街に残ったベートーヴェンは、環境の変化や親しい友人との別れを経験し、創作意欲をなくしていたようです。
そんな中、ベートーヴェンは一人のイタリア人女性と出会います。 その人物の名はテレーゼ。ウィーンで有名な実業家、マルファッティ家の令嬢です。
「エリーゼのために」を作曲するきっかけと言われる重要な女性ですが、表題にはエリーゼと書かれていますよね。
実はエリーゼの正体については諸説あり、最初にベートーヴェンの自筆譜を発見した学者ルートヴィヒ・ノールも、エリーゼの正体を調査しました。
しかし、ノール自身はエリーゼが誰だったのかは解明できず、その後音楽学者の研究が進められ、エリーゼに関する諸説が生まれました。
エリーゼの正体は?
エリーゼの正体については、ベートーヴェンと親交があった2人の女性が有力視されています。
- テレーゼ・マルファッティ
- エリーザベト・レッケル
テレーゼ・マルファッティ
引用元:Wikipedia
ドイツの音楽学者ワックス・ウンガーによって伝えられたテレーゼ説。 テレーゼとは、ベートーヴェンが戦地となったウィーンで出会った女性で、結婚を考えるほど愛していました。
そのため、「エリーゼのために」の自筆譜が発見された時、本来はテレーゼと書かれていた文字をエリーゼと読み間違えたと考えられています。
さらに、テレーゼ・マルファッティの遺品からも「エリーゼのために」の自筆譜が発見されたため、テレーゼ説が有力視されました。
ベートーヴェンがテレーゼにプロポーズをするために作曲したと考えると、テレーゼ説は説得力がありますね。 しかし、ベートーヴェンはテレーゼと結婚せず、生涯独身でした。
一方で、イギリスの音楽学者バリー・クーパーもテレーゼ説を発表。当時、ドイツ語の詩に使われるエリーゼという単語が恋人の女性を意味することから、ベートーヴェンも「エリーゼ」と書いたと考えられました。
ちなみに、ベートーヴェンのピアノソナタ第24番も「テレーゼ」と呼ばれていますが、彼が愛したテレーゼとは別人です。
エリーザベト・レッケル
引用元:Wikipedia
2010年頃に、ドイツの研究者クラウス・マルティン・コーピッツは、「エリーゼのために」はベートーヴェンが当時ソプラノ歌手だった「エリーザベト・レッケル」に捧げたと発表しています。
もともとエリーザベト・レッケルの兄とベートーヴェンは親交があり、その縁でオペラに出演したことがきっかけで知り合いました。
後にエリーザベト・レッケルは、ベートーヴェンの友人だった作曲家のフンメルと結婚したので、恋人ではなかったようです。
しかし、エリーザベトがウィーンで「エリーゼ」と呼ばれていた証拠(第1子の洗礼記録)が発見されたことでテレーゼ説が覆り、現在に至ります。
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「エリーゼのために」の楽曲解説!
ここからは、ベートーヴェン「エリーゼのために」の楽曲構成や難易度について詳しく解説いたします。
楽曲解説
「エリーゼのために」の正式な作品名は、『バガテル第25番 WoO59』です。 バガテルとは性格的小品という規模が小さな楽曲のことで、『WoO59』は作品番号がない曲に使われる認識番号。
調性・拍子 | イ短調・8分の3拍子 |
---|---|
楽語 | Poco moto(動きをもって) |
形式 | ロンド形式(A-B-A-C-A)。 同じ主題(A)が第2主題(B)・第3主題(C)が 繰り返される楽曲形式。 |
転調 | A(第1主題)イ短調→ハ長調 B(第2主題)ヘ長調 C(第3主題)イ短調 |
楽曲構成 【A・第1主題】 |
アウフタクト(1拍め以外から始まること)で始まる有名な冒頭部分。 イ短調の属音(5番目の音)から揺れ動く半音階的なフレーズが登場し、 左手のアルペジオから流れるような旋律を奏でる。 |
楽曲構成 【B・第2主題】 |
左手16分音符の伴奏にのせて、右手の愛らしいメロディが登場。 続いて32分音符のトレモロを経て、再び第1主題に。 |
楽曲構成 【C・第3主題】 |
流れるような第1主題から、突如イ短調の激しい連打にのせて悲観的な和音が登場。 低音の執拗な連打は、感情的でベートーヴェンらしい曲調。 |
「エリーゼのために」は、演奏時間およそ3分の小品。 しかし、楽曲を紐解いてみると、アルペジオ・スケール・半音階・トレモロ・同音連打・ペダリングなど、テクニカルな曲であることが分かります。
難易度(レベル)はどれくらい?
全音楽譜出版社の全音ピアノピースによると、「エリーゼのために」の難易度は「初級上」に分類されています。 また、曲の規模や構成から考えても初級~中級レベルと言えるでしょう。
教本レベルや年齢の目安は?
ここでは、「エリーゼのために」と同じレベルの教本や対象年齢の目安をまとめています。 ピアノ練習には個人差がありますので、目安として参考にしてみてくださいね。
ブルグミュラー25の練習曲(後半) | 小学校3〜6年生。 ピアノを習い始めて3〜5年の大人の方。 |
ソナチネアルバム | 小学校低学年から中学生。 |
ツェルニー30番練習曲 | 小学校高学年から中学生。 |
バッハ インベンションとシンフォニア | 小学校低学年から中学生。 |
「エリーゼのために」と難易度が同じ曲を3曲ご紹介!
ここからは、「エリーゼのために」と難易度が同じ楽曲を具体的にご紹介していきます。 ピアノの発表会にもおすすめな曲を、3曲ピックアップしました。
ショパン~ワルツOp.34-2~
ピアノの詩人と呼ばれたショパンは、ワルツを19曲残しています。 その中の一つ「第3番イ短調Op.34-2」は、ゆったりしたテンポで感傷的なメロディが印象的。
また、ワルツ特有の3拍子でありながら、テンポ感や不規則な3部形式など異色の作品となっています。
シューベルト~スケルツォ変ロ長調~
軽やかなスタッカートのメロディと中間部のコントラストが特徴的な曲です。
指先の繊細なタッチで弾くスタッカートや低音のなめらかなメロディラインなど、小品でありながら魅力的な曲と言えます。
スカルラッティ~ソナタニ短調~
チェンバロが主流だったバロック時代を代表する作曲家・スカルラッティのソナタニ短調は、哀愁漂うメロディや装飾音符が印象的な曲です。
コンクールや発表会の曲に選ばれることも多く、バッハと並びバロック音楽の勉強には欠かせない作品と言えます。
「エリーゼのために」よりやさしい曲を3曲ご紹介!
ここでは「エリーゼのために」よりも難易度が低い曲(初級)を、3曲ご紹介します。
ボッケリーニ~メヌエット~
イタリア出身の作曲家でチェロ奏者でもあるボッケリーニのメヌエットは、ピアノだけではなく、ヴァイオリンやチェロでも演奏されます。
ピアノ曲としては初級レベルで弾きやすく、「エリーゼのために」よりもやさしい曲です。 そのため、初めてのピアノ発表会にもぴったり!
ネッケ~クシコス・ポスト~
学校の運動会で一度は聞いたことがあるクシコス・ポスト。 ピアノソロ用にもアレンジされ、疾走感のあるテンポとリズミカルな曲調が特徴的です。
速さが求められる曲なので難しそうですが、実はシンプルで弾きやすい曲と言えます。
ゴセック~ガヴォット~
ベルギー出身の作曲家・ゴセックが残したガヴォットは、バレエやオペラで多用されていた楽曲形式。 フランス地方発祥の古典舞踊がルーツとされ、2拍子が主流の舞曲です。
どこかで聞いたことがあるような軽快なメロディが印象的で、技術的にもやさしく弾きやすいのでピアノ初心者にもおすすめですよ。
「エリーゼのために」より難しい曲を2曲ご紹介!
ここからは「エリーゼのために」よりも難易度が高い曲(中級)を、2曲ご紹介します。
チャイコフスキー~トロイカ~
12の性格的小品より11月「トロイカ」は、素朴で牧歌的なメロディが印象的な曲です。 オクターブや和音奏法など、技術的に見ても「エリーゼのために」よりも難しい曲と言えます。
チャイコフスキーならではの即興的で繊細な曲調も魅力の一つ。発表会の曲にもぴったりです。
ショパン~ワルツ華麗なる大円舞曲Op.18~
ショパンのワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」は、華やかで多彩な変化が特徴的な舞踏曲。 連打や装飾音符、広い音域の伴奏型など、技術的にも難しい部分はありますが、発表会では聴き映えする1曲です。
練習のコツは?
ここからは「エリーゼのために」の練習のコツをご紹介します。 基本となるスケール(音階)やアルペジオ(分散和音)を中心に練習ポイントを抑えましょう。
最初に「エリーゼのために」の弾き映えポイントを抑えよう
「エリーゼのために」は、大きく3つのセクションに分けられます。その中で弾き映えするポイントは2箇所。
- 23小節~35小節・ヘ長調の部分(第2主題)
- 52小節~82小節・イ短調の部分(第3主題)
23小節~35小節・ヘ長調(第2主題)
引用元:ベートーヴェン作品集(ヘンレ版)
左手で16分音符の伴奏型(アルペジオ)を弾き、右手でメロディラインを弾きます。 この時、低音の伴奏の方が響きすぎないようにバランスよく弾きましょう。
最難関は30小節からの32分音符のトレモロです。 トレモロとは、2音間を急速に反復する演奏方法で、手首をリラックスさせ指先の瞬発力を使って弾くと上手くいきますよ。
さらに、左手の重音も埋もれないようにしっかりと弾きましょう。 最初はゆっくり練習して、左右がズレてしまわないように注意してください。
52小節~82小節・イ短調(第3主題)
引用元:ベートーヴェン作品集(ヘンレ版)
低音の連打が鳴り響く第3主題は、劇的な和音や3度と6度の重音奏法が使われています。 テンポを安定させること・左右をぴったり合わせることに注意して弾いてみましょう。
左手連打の指使いは、楽譜上では「3-2-1-3-2-1」となっていますが、自分で弾きやすい指使いでも大丈夫ですよ。
さらに、等間隔で安定した連打を弾く練習は、メトロノームを使うと効果的です。 連打を弾きながら右手のメロディを声に出して歌ってみると、リズム感が身についてタイミングも覚えやすいです。
練習の際に気をつけたい点!
「エリーゼのために」を弾く時に気をつけたいポイントは、主に3つあります。 弾きにくい部分で急に遅くなったり、音が抜けてテンポが不安定になるなど、残念な演奏にならないように練習方法を工夫してみましょう。
- テンポを安定させる
- ペダルを踏むタイミング
- 左右の音量のバランス
3つのポイントを攻略するための具体的な練習方法をご紹介します。
テンポを安定させる
引用元:ベートーヴェン作品集(ヘンレ版)
テンポを安定させるためには、メトロノームを使った練習が効果的です。 ゆっくり弾く時や片手ずつ練習する時も、メトロノームに合わせてみましょう。
特に、30小節以降の32分音符のトレモロや77小節からの3連符は、メトロノームに合わせて片手ずつ練習してみてくださいね。
さらに、練習を効率よく進めるには、曲を区切ってみると良いです。 「エリーゼのために」は3つのパターンに分けられるので、難しい部分を重点的に練習してみましょう。
ペダルを踏むタイミング
引用元:ベートーヴェン作品集(ヘンレ版)
「エリーゼのために」は、楽譜上でペダルの指示が多い曲です。 左手のアルペジオや連打をきれいに響かせるためのペダリングは、タイミングが重要!
基本的には1拍めと同時にペダルを踏みますが、音が切れてしまったり余計な音が残ってしまうなど、意外と難しいです。
練習方法として、最初はペダルなしで一通り弾いてみましょう。 指だけでなめらかに弾ける部分やペダルが必要ない箇所をチェックして、少しずつペダルを使っていきます。
左右の音量のバランス
引用元:ベートーヴェン作品集(ヘンレ版)
左手の伴奏型と右手のメロディラインのバランスを確認するために、自分の演奏を録音または録画してみましょう。
自分の演奏を客観的に聞いてみると、バランスやテンポ感など練習が必要なポイントを確認することができます。
まとめ~名曲「エリーゼのために」を弾いてみよう♪~
今回は、ベートーヴェンの名曲「エリーゼのために」について解説してきました。
この曲が完成した時代の歴史背景やエリーゼの正体など、ベートーヴェンの作品にはドラマチックなエピソードがたくさんありますね。 ぜひ「エリーゼのために」を弾いて、新たな魅力を見つけてください!
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