ピアノ歴20年以上のWEBライターです。コンクールや受験、さらにピアノ指導経験を活かした記事作成を行っています。
目次
ピアノを習う上で欠かせない教本といえば「バイエル」です。 私自身、幼少期にピアノを習い始めて最初に取り組んだ教本がバイエルでした。
正しい姿勢や指の置き方など、ピアノの基礎をじっくり学べる教本なので初心者に最適な教材と言えます。
また、最近は大人になってからピアノを習い始める方も増えています。 そのため、大人のピアノ初心者向けに編集されたバイエルピアノ教則本も出版されています。
しかし、ピアノ初心者が必ずしもバイエルを学ぶ必要があるのか疑問に感じますよね。
そこで今回の記事は、ピアノ学習においてバイエルのメリット・デメリットや活用法、特徴など、ピアノ指導の経験も交えて解説していきます。
さらに、バイエルの併用教本や次に進む教本についてもご紹介していますので、参考になれば嬉しいです!
バイエルとは?
出典:全音楽譜出版社
「バイエル」とは、ドイツの作曲家でピアニストのフェルディナンド・バイエルが著した「ピアノ奏法入門書」がルーツです。
日本では、ピアノが一般家庭に普及した明治以降に伝わり、「バイエルピアノ教則本」として知られるようになりました。
バイエルは、ピアノの基本的な奏法を習得するための練習曲全106曲で構成され、出版社によって様々な教本が存在します。
子どもはもちろん、大人の初心者や幼稚園・小学校の教諭を目指す方など、幅広い世代に適したバイエルが出版されています。
バイエルのレベルは?
「バイエル=ピアノ入門編」というイメージ通り、バイエルのレベルはピアノ初級です。
国内最大規模と言われるコンクール「ピティナピアノコンペティション(全日本ピアノ指導者協会主催)」では、未就学児部門の課題曲に指定されるケースもあります。
バイエルでは、まず片手だけの短い練習曲から始まり、正しい手の形や指の置き方、楽譜の読み方などを学びます。
ちなみに、片手ずつの練習曲には先生用の楽譜も掲載されているので、連弾が楽しめます。
その後、両手の練習曲や併用曲に進み、複雑なリズムやオクターブ奏法などを練習していきます。
バイエルの種類や違いについて
全音楽譜出版社だけでも、5つのバイエル教本が出版されています。 次の表でそれぞれの特長や対象となる年齢層(目安)をまとめていますので、参考にしてみてくださいね。
5種類のバイエルの対象年齢や特徴は?
こちらの表は、5種類のバイエルの対象年齢と特徴をまとめています。
対象年齢 | 特徴 | |
---|---|---|
子供のバイエル (上巻・下巻) |
未就学児~小学校低学年 |
|
標準バイエル | 中高生~大人 |
|
全訳バイエル | 小学校高学年~中高生 |
|
指使いつきバイエル | 大人のピアノ初心者 |
|
最新バイエル | 保育科・幼児科などの学生 |
|
【種類別】バイエルの具体的な内容とは?
ここからは、全音楽譜出版社の3種類のバイエルに掲載されている内容をご紹介しますね。
【子どものバイエル・上巻】
- 五線・音符・拍子・小節・オクターブ・付点二分音符・加線・和音・タイのおはなし
- よい姿勢・鍵盤と譜表の関係
- 練習曲No.1~43(右手・左手・両手)
- 併用曲「ちょうちょう」「かっこう」「はち」「かわいい小鳥」「ままごとあそび」
【子どものバイエル・下巻】
- 練習曲No.44~106番
- 応用曲「冬景色」「とうだいもり」「ちゅうりっぷ」「新しい人形」
【最新バイエルピアノ教則本】
- 両手による導入曲
- 鍵盤ポジションによる手の位置
- やさしい曲や調性による配列
- 原曲を♭系に移調した練習曲
- 応用曲
【標準バイエルピアノ教則本】
- 子供のバイエル上下巻の内容
- カノン・月の光に・ベートーヴェンの主題など、20曲(ソロ)
- メロディ・パッセージ・ちょうちょう・歌劇「オベロンの合唱」(連弾曲)
【全訳バイエルピアノ教則本】
- 楽典の初歩
- 加線・音符の長さ・音階・スタッカート・臨時記号などの練習曲
- 24の長音階・短音階の練習
- タランテラ舞曲・エリーゼのためになどの応用練習曲
【指使いつきバイエルピアノ教則本】
- 全訳バイエルの内容と同じ
- すべての音符に、指使いが指示されている
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どのバイエルが自分に合ってる?
バイエルの楽譜は、子どもや大人向けなど、さまざまな種類があります。 ここでは、楽譜選びのポイントをご紹介します。
子ども向け
小さい子どもを対象としたバイエルには、音符が大きく書かれていたり、可愛らしいイラストが挿入されています。
ピアノレッスンでバイエルを教える際も、イラストがあるとお話が広がって興味を持ってくれます。
また、音符が大きく書かれていると、楽譜を見ようとして姿勢が崩れることがなくなります。
大人の初心者向け
大人のピアノ初心者には、1冊にまとまっている「標準バイエル」や「最新バイエル」がおすすめです。
随所に解説が入っているので、独学でも理解しやすい内容になっています。
バイエルは終了するまでにどれくらいかかる?
ピアノの基本的なテクニックや譜読みの習得には個人差があるため、バイエルを終了するまでの期間は人それぞれです。
また、レッスンの回数や時間によって異なりますが、バイエル終了までの目安としては2〜3年が標準的と言えます。
一方で、1回のピアノレッスンでバイエルを複数曲こなしてしまう生徒さんは、2年かからずに終了することもあります。
さらに、大人からピアノを始めてバイエルに取り組む場合、じっくり習得する方や短期間で終わらせたい方など、やはり個人差が生じます。
いずれにしても、自分のペースで無理なく進めることが大切ですね。
バイエルの次はどの教本?
バイエルの終了後に進む教本として最も有名なのは、ブルグミュラーです。
ドイツの作曲家・ブルグミュラーが残したピアノ入門期の教本で、「25の練習曲作品100」「18の性格的な練習曲作品109」「12の旋律的で華麗な練習曲作品105」があります。
バイエルの次は「ブルグミュラー25の練習曲」に進むことが多く、発表会やピアノコンクールの課題曲に指定される楽曲もあります。
こちらの表は、ブルグミュラーの各練習曲集の特徴をまとめています。
特徴 | 曲例 | |
---|---|---|
25の練習曲 |
|
|
18の練習曲 |
|
|
12の練習曲 |
|
|
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バイエルは時代遅れ?その理由や欠点は?
ピアノ初心者の登竜門といえるバイエルですが、実は「つまらない」「内容が偏っている」など欠点も指摘されています。
バイエルはシンプルで短い練習曲が多いため、反復練習がつまらなく感じることも珍しくはありません。
また、ハ長調で同じ音域の曲が多いため、突然♭や#が出てくると難しく感じてしまうデメリットもあるのです。
さらに、バイエルに代わる教本も増えていることから、現在ではピアノレッスンにバイエルを使わない先生も多いです。
ピアノを始めたばかりの幼い子どもは集中力も乏しく、バイエルの練習にも工夫が必要です。
例えば、音符に歌詞をつけて歌わせてみたり、大げさな強弱をつけて弾いてみたり。
楽譜通りに弾くことも大切ですが、バイエルも少しアレンジを加えてみると楽しくなりますよ。
バイエルの上手な活用法や併用教本のおすすめは?
レッスンでは、バイエルと他のピアノ教本を併用することが多いです。
例えば、バイエルでは音階や手のポジションなどピアノの基礎を学び、別の教本では応用として表題曲を練習します。
バイエルとは違う練習曲に取り組むことで、表現力や想像力を伸ばしてレパートリーを広げていきます。
効果的な練習方法として、最初にバイエルでウォーミングアップ(20〜30分)をしてから応用曲に進むと良いでしょう。
毎日の練習では、ゆっくり弾く練習や一ヶ所を重点的にさらうなど、目標を立てると上達も早くなる傾向があります。
また、長時間の練習よりも、集中力が途切れない短時間練習を繰り返す方が効率的と言えます。
こちらの表は、併用に適した教本とその特徴をまとめています。
ハノン |
|
---|---|
トンプソン現代ピアノ教本 |
|
メトードローズピアノ教則本 |
|
サブ・バイエル |
|
バスティンピアノベーシックス |
|
【こんな方におすすめ】バイエルに向いている人とは?
ピアノ初心者にとってバイエルは、ピアノの基礎を学ぶ大切な教本と言えます。
そこで、バイエルに向いている人・バイエルをおすすめしたい人の例を挙げてみますね。
- 大人になってから初めてピアノを習う
- 独学で趣味としてピアノを学ぶ
- 幼稚園・小学校教諭・保育士などの試験のため
- ピアノを片手ずつじっくり練習していきたい
- 譜読みに時間がかかる
実際に、保育士の試験を受ける生徒さんにバイエルをおすすめした経験があり、採用試験の課題になったケースもあります。
今やバイエルは、子どもより大人のピアノ初心者向けの教本と言えますね。
まとめ
今回は、ピアノ初心者の入門編「バイエル」について解説してきました。
バイエルはピアノの基礎を学ぶ大切な教本であることは間違いありませんが、欠点もあるため、使っていない先生も多いです。
さらに、バイエルに代わる教本も多数出版されているので、今では「バイエルはピアノ学習教材の候補」となっています。
目的や練習のペースを考慮して、自分にあった教本を選んでみましょう。
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