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ハノンといえば、多くのピアノ学習者がレッスンに取り入れている教本です。
一般的な練習曲と比べると、同じ音形をひたすら繰り返して弾く機械的なイメージが強いですよね。
しかし、ピアノ演奏に必要なテクニックの基礎がすべて入っているので、初級者はもちろん、プロのピアニストも使う大切な教本と言えます。
ちなみに、私もピアノの練習をする時は最初にハノンを弾いています。
とはいえ、ピアノの練習にハノンは絶対に必要なのか疑問に感じる方も多いですよね。
この記事では、ピアノの基本練習に最適なハノンについて徹底解説するとともに、ハノンのメリット・デメリットや効果的な応用練習など、ピアノが上達するコツを交えてご紹介していきます。
ハノンって?
ハノンを作ったのは、フランス出身のオルガニスト・作曲家でピアノ教師だったシャルル=ルイ・アノン。
教本の正式名称は「60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアノ」で、日本ではドイツ語風に「ハノン」と呼ばれています。
ハノンは第1番〜第60番まで全60曲で構成され、ツェルニーやブルグミュラーなど楽曲として成立する練習曲とは性質が異なります。
ハノンの歴史
ハノンがフランスのブーローニュで出版されたのは、シャルル=ルイ・アノンが54歳だった1873年。
当時、フランスの名門・パリ音楽院で「ハノン」教則本が使用され、一躍知名度が上がったと伝えられています。
日本では戦前からすでにハノンが使われ、ピアノ教育の発展とともに使い方も多様化しました。
現代では、メイン教材とハノンを併用するケースが多いですね。
いつから使うの?
ハノンをレッスンに導入する時期は、ピアノを習い始める年齢によって異なります。
例えば、手が小さく指が弱い幼児にハノンはおすすめできません。
個人差はありますが、ピアノの鍵盤でオクターブが届くようになったらハノンを使うと効果的です。
目安としては、ピアノを習い始めて3〜4年目。
一方、大人からピアノを始める方には、ハノンと教本を併用してレッスンを行う先生も多いでしょう。
5本の指を均等に動かす練習としてハノンを使用しながら、ソナチネやツェルニーなどレベルに合った楽曲を同時に練習すると効果が大きいです。
ハノンのレベルは?
ハノンは、第1部・第2部・第3部の3つに分けられています。
それぞれのレベルや内容は、以下の表を参考にしてみてください。
第1部(No.1〜20) | 第2部(No.21〜43) | 第3部(No.44〜60) |
---|---|---|
★ | ★★ | ★★★ |
5本の指の独立や強化を 目的とする練習曲。 すべて4分の2拍子ハ長調で リピートあり。 |
第1部を発展させた 練習曲(21〜31番) 32から37番はスケール (音階)の準備練習。 38番は1オクターブ・ 39番からは4オクターブで 全調の音階。 40番半音階練習。 41〜43番アルペジオ (分散和音)の練習。 |
より高度なテクニックを 習得するための練習曲。 44〜47番は同音連打やトリル。 48〜50番は3度や6度の重音奏法。 51番以降は、オクターブや 重音で音階を弾く練習。 56〜60番はオクターブの トレモロやアルペジオといった 高難度の練習曲。 |
第1部と第2部はピアノ演奏の基本練習になるので、全曲通して練習することが多いです。
一方、第3部はツェルニーやモシュコフスキーなどの練習曲で代用できる内容と言えます。
ハノンにもデメリットがある?
ハノンは、ピアノの基本練習として有名ですがデメリットもあります。
- 機械的で練習が退屈になる
- 楽曲としての要素がない
- 左右の動きが同じ
第1部は5本の指を動かす練習曲が20曲続いています。
初見ですぐに弾ける内容ですが、左右同じ音形で大きな変化もない曲なので、次第につまらなくなることも。
また、ハノンは両手の指をほぼ同じように動かす練習が多いため、左右で弾き方が異なる楽曲に対応できなくなるリスクもあります。
さらに、ハノンはテクニックに特化した練習曲のため、強弱記号やペダル、楽語がほとんど書かれていません。
そのため、楽譜を読んで指示通りに弾く必要がなく、ピアノ演奏においての表現力や音楽性が身につかない点もハノンのデメリットと言えます。
ハノンの驚くべき効果5選
ハノンにはピアノ演奏のクオリティを上げるための練習曲がたくさんあり、毎日コツコツと練習することが大切です。
- 指をすばやくコントロールできる
- 弱い指を強化する
- 指の持久性が向上する
- 手のフォームや姿勢を整える
- 手首の柔軟性を身につける
指をすばやくコントロールできる
ハノンの練習曲は、5本の指を均等に鍛えることを目的として作られ、第1部だけでも各指の独立や強化につながる練習曲が20曲あります。
また、白鍵だけを使うので速いテンポでも弾きやすく、指をすばやく動かす訓練としても最適です。
まずは、しっかりした音が出せるテンポで練習して、少しずつ速くしていきましょう。
ハノンで指を鍛えると、Allegro(快速に)やPresto(急速に)といった速さにも対応できるようになりますよ。(個人差はあります)
弱い指を強化する
ハノンの練習曲は、小指(指番号5)や薬指(指番号4)といった弱い指の強化に絶大な効果があります。
第1部では、4と5の指をすばやく動かす音形のパターンが多く、通して弾くとより効果的です。
指の持久性が向上する
ハノンでは一定のテンポで指を動かす練習が続くので、指の持久力が身についてきます。
演奏時間が長い楽曲や複雑な練習曲など、最後まで安定したタッチで弾くための訓練になります。
手のフォームや姿勢を整える
親指をくぐらせて弾かなければならないスケールやアルペジオでは、手のフォームが崩れがち。
ハノンにはスケールの前の準備段階として、親指の移動に特化した特別な練習曲(32番〜37番)があります。
この段階で親指をスムーズに動かせるようにトレーニングをしてから、スケールやアルペジオの弾き方を習得すると良いですね。
手首の柔軟性を身につける
ハノンを弾く時、必要以上に力を入れるとすぐに手が疲れてしまいますよね。
そこで、手の疲労を軽減するために手首の脱力を意識してみましょう。
さらに、ハノンの第2部と第3部からは、手首の使い方が重要なスケール・アルペジオ・オクターブ・トレモロなどの発展練習が登場します。
速いテンポで弾くよりも、手首に負担をかけない弾き方を心がけると柔軟性も身につきます。
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効果的な練習方法は?
ハノンを練習する時は、メトロノームを使うと効果的。
テンポが少しずつ速くなったり、逆に失速しているなど、意外と自分では気づきにくいです。
ここからご紹介する練習も、常にメトロノームに合わせて試してみてください。
ちなみに、ハノンの練習時間の目安は1日30分以上が理想的です。
リズムを変えて練習
引用元:ハノン(全音楽譜出版社)
ハノンには、いろいろなパターンのリズム練習が不可欠です。
指の強化だけではなく、手首の柔軟性やリズム感を身につけるためにも必要な練習と言えます。
全音楽譜出版社のハノンには、22のリズム変奏例が記載されています。
どのパターンも面白いので、片手ずつやメトロノームを使って練習してみてくださいね。
リズム変奏例
- 付点リズム・逆付点リズム
- アクセントの位置をずらす
- 3連符に分割する
いろいろな調で練習
ハノンの前半は白鍵だけを使うので、ト長調やニ長調といった黒鍵を使う調に変えてみると効果的です。
指を広げる訓練にもなりますし、複雑な音形をスムーズに弾く練習としてもおすすめです。
ただし、最初は難しいと思うので、ゆっくり練習して黒鍵に慣れていきましょう。
変化させて弾いてみる
引用元:ハノン(全音楽譜出版社)
私が学生時代によく練習していた方法が、4分の2拍子を3拍子に変えて弾いてみる練習法です。
音を増やして弱い指を鍛え、3拍子のテンポにも慣れる一石二鳥の練習法です。
さらに、1回目は強い音で弾き2回目は弱い音、そして3回目は1小節ごとに強弱をつけて弾くと、指先を自由自在にコントロールする訓練になります。
左右違うタッチで弾く
例えば、右手はスタッカートで左手はレガートなど、左右で弾き方を変えてみましょう。
慣れてくると、左右異なる動きにも混乱せず対応できるようになりますよ。
さらに、左右で1拍ずらして弾いたり、片方だけ付点リズムに変えて弾くなど、いろいろなパターンを練習するとより効果が現れます。
引用元:ハノン(全音楽譜出版社)
ハノンが終わったら次はこれ!
ハノンを一通り練習したら、次は実践的な練習曲を使ってみましょう。
ここでは、ピアノ経験者がおすすめしたい3つの練習曲集をご紹介します。
クラーマー・ビューロー60の練習曲
ツェルニーより知名度が低い練習曲集ですが、テクニックに加えて音楽的で美しい曲や短い曲が多いので、飽きずに練習できます。
ちなみに、この練習曲は「クラーマー」と「ビューロー」という2人の作曲家によって作られた教本です。
左右バランスよく練習できる楽曲が多いので、ハノンの次にぴったり!
ツェルニー30番または40番練習曲
練習曲集の王道であるツェルニーもおすすめ。
例えば、ハノンの第2部まで終わったらツェルニー30番に進んで実践練習を取り入れると効果的です。
さらに、ハノンを最後まで練習した人はツェルニー40番に入っても良いと思います。ハノンの第3部で練習した同音連打やトレモロなどの高度なテクニックを、楽曲の中で活かせます。
モシュコフスキー20の小練習曲
ハノンで習得したテクニックを、音楽的に表現するための練習曲として最適な教本です。
音階をなめらかで表情豊かに弾くことや和音の変化など、技巧的なハノンでは足りない要素を補えます。
この曲集は、前半10曲と後半10曲の2部構成になっているので、目標を立てて練習を進めてみてください。
〜ハノンは奥深いピアノ教本だった〜
今回は、ピアノ教本の定番であるハノンについて詳しく解説してきました。
日本でピアノ教育が広まった時代から使われているハノンは、現代でも必須と言われています。
ハノンは、ピアノ演奏の基本がシンプルな練習曲で学べる教本なので、ぜひ使ってみてくださいね。
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