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【ピアノの先生が解説】絶対音感とは?メリットやデメリット、相対音感との違いも◎

Written by
2024.05.31
山崎由芽
【執筆・監修】山崎由芽

3歳から12歳までピアノ教室に通っていました。その後は中学・高校でコンクールや行事で伴奏をしていました。現在は趣味で弾き語りや基礎練習を続けて、兄弟に教えています。 音楽の楽しさと壁の乗り越え方を、経験をもとに伝えていきます。

ピアノを弾ける人の特権と言われる「絶対音感」、何もしていない人には身に付かないのでしょうか。
さらに調べていると「相対音感」という言葉も出てきます。
2つの違いやどちらの方が有利なのかなど、分からないことが増えてしまいますよね。

今回は「絶対音感」と「相対音感」の違いやメリットとデメリット、診断と習得方法など詳しく見ていきましょう。

絶対音感とは?簡単に

絶対音感とは?簡単に

絶対音感とは、1音聞いただけで一瞬で正確に音名を当てられる能力を指します。
精度に個人差がありますが、最低でも聞いた音を当てることが能力の最低条件です。
「楽器の音」ではなく最初から「ドレミ」で音が聞こえています。
聞こえ方ですら一般的でないので、より超能力らしく感じられます。
中には音だけでなく、周波数まで判別できる人もいるようです。

絶対音感は1度習得すると、全く使っていなくても消えることはありません。
多少精度が落ちる程度で済むので、音楽が好きな人なら習得しているとより楽しめるでしょう。

ただし、確実に習得するのは幼少期しかできず、大人になってからは困難だといえます。

絶対音感を持つメリットとデメリット

絶対音感を持つメリットとデメリット

絶対音感というと、「いつでも耳コピで演奏できる」「ピアノが弾ければ絶対についてる能力」と思っている人は多いです。
では、経験も含めて絶対音感を持っているメリットとデメリットをお話します。

絶対音感を持っているメリット

原曲を聴けば耳コピできる

絶対音感を持っている人は、原曲を聞いただけですぐに再現できます。
長年弾き続けている人や普段から耳コピをしている人は、最初から両手で限りなく原曲に近い演奏もできます。
分かりやすいのはYouTubeやSNSでよく見る、ストリートピアノで「リクエストに応えて弾いてみた」などの即興演奏です。
私の場合は耳コピにそこまで興味がなかったので、メロディのみ再現できる程度です。
同じ絶対音感持ちでも、普段の使い方でここまで差が出ています。

テストや受験で有利

中学のテストや大学受験では、リスニング問題が出されます。
その時に絶対音感を持っていると、迷わずにサクサク解けるのでとても有利です。
何なら音声を3回流してくれるところ、1回聞いた瞬間に答えていたので試験データがCDの場合は待ち時間さえ作れます。

さらに絶対音感なら正確性も持ち合わせているので、マークシートなどで書き間違えない限りほとんど当てられます。
心の余裕にも繋がるので、テストの時は「持っていてよかったな」と感じました。

突然キーを変えても問題ない

カラオケやアレンジの施された楽曲など、突然キーを変えられても全く問題ありません。
焦らず冷静に、かつ1発で確実に音を仕留めるので、周りにいる人からも褒められちゃいます。

自分のモチベーションアップや、アレンジされた曲を楽しめるのは絶対音感の特権です。
私が高校生の頃、友達同士でキーをいきなり変えて音程を外した方の負けというゲームをしていました。
絶対音感を持っている者同士ならではの遊びも、すごく楽しいのでおすすめです。

絶対音感を持っているデメリット

純粋にカラオケを楽しめない

音に関わる全ての娯楽で言えますが、少しでも音程がずれると気になりすぎて楽しめなくなってしまいます。
特にカラオケでは、どう考えても伴奏と歌声が合っていないのに、ずれていることにすら気が付いていない友達を見るとモヤモヤが溜まりすぎて楽しめませんでした。
もちろん自分にも言えます。
決して歌が上手いわけではなかったので、自分で制御できていない時はむしろイライラしてしまうこともありました。
キーを瞬時に合わせられる反面、こういったこともよく起こってしまうんです。

歌は音痴

絶対音感を持っていても、歌は音痴な場合が多いです。
自分の感じた音を声で表現するのは、また別の能力が必要なため歌の練習をしなければ音痴は治りません。

実際に3歳からピアノを習っていたので絶対音感は持っていましたが、高校1年生の上半期頃までは驚くほど音痴でした。
父譲りの負けず嫌いで、親戚や友達に「ピアノ弾けるのに何で音痴なの」と言われたのがかなり悔しく、徹底的に歌の練習に費やしました。
発声練習など基礎を頑張れば70点行けば喜べるレベルから、90点以上が普通になるほど上達できます。

この練習期間を経て気が付いたのは、音痴といえど絶対音感を持っていると練習がかなり楽です。
音を取ることは他の練習メニューよりも早く習得できるので、メリットとしても取れます。

生活音が気になる

1度音名で聞き取れてしまった生活音は、頭からなくなるまでずっと気になってしまいます。
ドアを開閉する音やチャイム、電話の着信音など、当たり前の些細な日常が鬱陶しく感じやすいです。

特に疲れている日は、嫌気がさすほどうるさく感じてしまいます。
ちなみに家の中にいる時は、聞こえた音をすぐ鍵盤で弾いて消化するようにしていました。
それでも耳に残るフレーズは多く、試験前や寝る前はかなりモヤモヤしがちです。

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絶対音感の習得は可能?

絶対音感の習得は可能?

絶対音感は今からでも習得できるのでしょうか。
また、音楽に関わったことのない人でも身に付くかも併せてお話しします。

生まれつきの才能?後天的のもの?

絶対音感を生まれつき持っている人は、ごく稀です。
多くの人は後天的で、幼少期に音楽と触れ合い自然と身に付いています。
幼少期のみ習得できると言われており、4歳までにピアノを始めて8歳頃に身に付けるというのが最も負担の少ない方法です。
いつから絶対音感が付いたのかは、あまり覚えていません。
ですが、小学生の頃にはチャイムが音名で聞こえていたので、3年以上続けていれば確実です。

大人からは「絶対に無理」とは言いたくありませんが、音楽に触れて来なかった人ならかなり頑張らなければなりません。
何より感覚的な能力なので、集中力や五感を使い続けます。
順調に身に付く場合でも、練習後の疲労は覚悟しておくと良いでしょう。

絶対音感の診断とトレーニング方法

絶対音感の診断とトレーニング方法

自分に絶対音感があるのか気になる人のために、まずは音感診断テストをしてみましょう。

あなたは絶対音感の持ち主?音感診断テスト4選

絶対音感の診断テストはサイトやYouTube、本屋、セルフチェックでできます。
セルフチェックは家にピアノを置いていることと協力者が必要です。

そのため今回は誰でも簡単にできる、手持ちのスマホやピアノを持っている人におすすめの診断テストを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

音感診断テスト サイト編

①【絶対音感診断(easy)】あなたは実は絶対音感の持ち主かも?

この診断は記事を読む感覚で、全10問に答えていきます。
1問1音で出題してくれてシャープやフラットなど黒鍵はないので、シンプルな音を当てたい人におすすめです。
登録やメールアドレスなど個人情報を一切入れずに、その場で採点結果が見られるので安心です。
このサイトは「easy」「normal」「hard」の3つのレベルがあるので、最難関までたどりつけるように挑戦してみてください。
ちなみに私の結果は、100点でした。

②絶対音感のテスト

この診断は1問につき四分音符を5つ流してくれます。
黒鍵を含んでいるので、過去にピアノを習っていた人や、何かしら音楽に関わっていた人におすすめの診断です。
1問1答で音声の真下に正答ボタンがあるので、試したい分だけ挑戦できます。
ちなみに私の結果は5問中2問正解でした。
白鍵は全てあっていましたが、黒鍵を白鍵に当てはめる癖が付いてしまっておりこの結果です。
黒鍵が苦手な人や、知らなかった癖を発見する機会にもなるので、ぜひ挑戦してみてください。

音感診断テスト YouTube編

①【音感テスト】あなたの絶対音感レベルは?

こちらは診断が始まる前に説明文を流してくれたり、「ここからシャープやフラットが始まります」といった一言もあります。
診断に慣れていない人でも、安心して自分のペースで始められちゃいます。
大まかな内容は「全15問、1音を2回聞いて答えを流す」の繰り返しです。
1問ごとに自分で採点をしますが、最終問題後に正解率別に音感レベルも見られます。
ちなみに私の結果は15問中12問正解で、「かなり高い音感を持っている」そうです。
問題だけでなく、大まかな音感レベルも知りたい人におすすめです。

②音当てクイズ全60問【絶対音感テスト】

この診断は四分音符を3つ流し、3つのカードから答えを選びます。
このカードがポイントで、ト音記号(右手)とヘ音記号(左手)で音符を書いてくれています。
音楽経験者も良いですが、中学レベルまでのテスト勉強やピアノ教室を始めたばかりの人におすすめです。
音感テストをしながら、5線譜の音符を読む練習もできて一石二鳥です。

ただし、この動画を使用する注意点とデメリットも2つあります。
動画を再生した瞬間に音が鳴り始めること、音の高低さえ分かれば答えられてしまう問題があることです。
そのため普段から察しの良い人には、向かないかもしれません。

絶対音感を習得・強化するトレーニング方法2選

幼少期にピアノをはじめとする音楽に触れてこなかった人が、絶対音感を習得するのはどうしても大変です。
勉強のように頭で覚えるだけではなく、豊かな耳を育てることもしなければなりません。
理解したうえでトレーニング方法を見ていきましょう。

聴音トレーニング

聴音トレーニングとは、ピアノや電子機器で出した音をノートに書き出す方法です。
最初は1音から始め、正答率が9割を超えたころから和音へとレベルを上げましょう。
また、3音の和音まで到達したら黒鍵を混ぜるようにすると、よりしっかり1つの音を耳と脳に叩き込めます。
早く覚えたいからと、最初から黒鍵を混ぜると物凄く混乱するので辞めた方が良いです。

家にピアノがない人でも、今はスマホのアプリやユーチューブなどで音を出せるので、自分に合った方法で聴音トレーニングをしてみてください。

ドレミ歌トレーニング

ピアノやアプリで音を出し、聞きながら音名で歌います。
例えばピアノでドを鳴らしたら、「ドー」と歌うような流れです。
この時、できるだけ歌の音程も合わせられると、より効率よく覚えて忘れにくくなります。
さらに音痴改善にもなるので、悩みを持っている人にはおすすめです。
これは私が実際にピアノ教室でやってきた方法です。
また吹奏楽部で音程が合わず、それを覚えられない人にも活用していました。

勉強のような頭の使い方をしないので、幼稚園から大人まで簡単にできちゃいます。

相対音感との違いは?

相対音感との違いは?

絶対音感について調べていると、必ずと言っていいほど「相対音感」という単語が付いてきます。
これらの違いは何でしょうか。

相対音感とは?

相対音感とは、2つの音を聞き比べることで大まかな音名を判断する能力です。
1音を聞いただけでは判断できず、必ず基準となる音が必要になります。
精度の高い相対音感を持っている人は、「ハモリ役」として活躍しやすいです。
主旋律が基準の音となるので、音程差を感じてそのまま歌えば楽にハモれます。
絶対音感との大きな違いは、誰でも生まれつき備わっている能力ということです。
その精度はかなり個人差があるため、「音感がない」と感じる人も多いです。

しかし、どんなに精度が低くても誰にでも備わっている能力なので、先程紹介したトレーニングを行えば徐々に使えるようになります。
社会人になり絶対音感が身に付けられないのならば、相対音感を磨いてより精度の高いものにしていきましょう。

絶対音感と相対音感、習得するにはどっちがいい?

では、絶対音感と相対音感はどちらを習得した方が良いのでしょうか。
周りから「凄い」と言われるなら、やはり絶対音感ですよね。
原曲を数回聞けば少なからずメロディは弾けますし、ほとんどの楽器演奏にも役立ちます。
目に見えて大きな活躍ができる能力です。

しかし、ピアノ以外の楽器を演奏する機会が多いのであれば、相対音感をおすすめします。
管楽器やバイオリン、ヘヴィメタルをする人は、チューニングなど基準となる音が半音〜全音下がるので絶対音感だと戸惑ってしまいます。

実際に、私は吹奏楽部の時トロンボーンを吹いていました。
最初の1ヵ月は音程に対して戸惑いだらけで、慣れてからも稀に間違えてしまいます。
合奏の前には必ずチューニングをしますが、新任の先生や急遽先輩が前に立つ時は「ドください」という人もいます。
楽器によってドが「シ♭」なので、譜面なしで基礎練習をする日は大変です。
途中から参加せざる得ない日に限ってインターバル(半音を含む上下運動)があれば、なかなか参戦できず少し恥ずかしいです。

絶対音感は幼少期、相対音感はトレーニングで磨ける!

絶対音感は幼少期、相対音感はトレーニングで磨ける!

絶対音感と相対音感の違いや、習得の有無を最後におさらいしましょう。

【絶対音感】

1音を聞いただけで正確に、音名を当てる能力です。
最初から音名で聞こえる人が多く、先天的な場合はごく稀です。
4歳までにピアノをはじめとする音楽に関わった人は、自然と絶対音感が身に付いています。
1度習得すれば、完全になくなることはありません。

【相対音感】

基準音と比較して、対象の音を当てる能力です。
誰でも生まれつき備わっていますが、精度の差がかなりあります。
トレーニングを行えば、年齢に関係なく精度を高められます。
耳コピよりも、ハモリや吹奏楽などで活躍できる能力です。

自分に合った方法とペースで、習得と精度の向上をしていきましょう。

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