幼い頃から音楽に触れ続け、ピアノ歴は20年以上です。数年前まではピアノやクラリネットを中心に音楽活動し、入団した社会人の交響楽団では様々な場所での公演を行いました。現在は一児の母。娘にピアノを教えることが最近の楽しみです。
目次
調律って、本当にしたほうがいいの?」
「調律って、どのくらいの頻度でお願いするの?」
このようなお悩みを抱えている方もいるでしょう。
ピアノは繊細な楽器のため、音がずれていないか定期的なメンテナンスが必要です。
本記事では、ピアノ歴25年以上の筆者の経験から、調律の必要性や自分のピアノに合ったタイミングを解説しています。
正しい調律の知識を持つことで、大切なあなたのピアノは長くお使いいただけます。
調律の必要性
ピアノの調律は、音がずれないように調整するだけではなく、長く愛用できるようにコンディションを整える意味でも必要な作業です。
ピアノは220〜230本もの弦が張られていて、弦を強く引っ張れば高い音、弦を緩めれば低い音が出るように、弦の張り具合によって音が変わります。
ギターのような弦楽器を想像すると分かりやすいでしょう。
これらの弦楽器は音を合わせるチューニングが必要ですが、ギターとは違いピアノは弦を引っ張る力が大きいので、調律が難しい楽器です。
ピアノの弦を引っ張る力は1本につき90キロもの負担がかかっていて、誰でもできるわけではないので調律師にお願いしましょう。
また、なかなか使う機会がないと「使うときに調律すればいいや」と考えて放置してしまう場合もあるでしょう。
しかし放置すると、音がだんだん出なくなったり、カビやサビが発生したりと傷みやすくなります。
傷んだピアノの調律には別途メンテナンスが必要となり、費用が加算されるケースもあります。
しばらく使わない場合でも、ピアノの定期健診を行ないましょう。
調律の頻度は?
ピアノの調律は、1年に1回を目安に調律師にお願いするといいでしょう。
どのくらいの頻度が正しいのか分からない方も多くいると思いますが、ピアノの調律は人間でいうところの健康診断です。
ただし、調律の頻度はピアノを使う頻度とイコールしているので、必ず1年に1回でいいというわけではありません。
推奨する調律頻度と、中古ピアノである場合の考え方について、以下で詳しく解説します。
推奨するピアノの調律頻度
前述したように、基本的なピアノの調律は1年に1回を目安に行うことが望ましいです。
しかし、ピアノを毎日弾く人とたまにしか弾かない人とでは、必要な調律の頻度は変わります。
どのように頻度が変わるのかは、以下の表を参考にしてください。
毎日弾く | 1年に1〜2回 |
---|---|
ほぼ毎日(30〜1時間程度) | 1年に1回 |
週2〜3回(30〜1時間程度) | 1年に1回か、2年に1回 |
ほとんど弾かない | 2〜5年に1回 |
上記のように、ピアノを使う時間が多いほど調律は必要になります。
ただし、毎日弾いているからといって調律をしすぎることはあまりおすすめできません。
調律の工程上、ピアノの内部に過度な負荷がかかり傷みやすくなるからです。
自分がピアノを弾く頻度に応じて、必要な調律の回数を検討しましょう。
中古ピアノだと調律頻度は変わる?
結論から言うと、中古ピアノの場合も1年に1回を目安に調律することをおすすめします。
新品ピアノの場合は、音程が下がりやすく安定しないため、半年に1回ほどの頻度で調律するのが妥当です。
しかし、中古ピアノはすでに音色が完成されている場合が多いため、新品と比べると調律の頻度が少なく済みます。
調律をほとんどしていなかった場合と、毎年していたピアノでは同じ中古品でも音が安定するまでの期間は違います。
中古となる前の利用者の使い方にもよるため、調律師からアドバイスをもらいましょう。
長年調律してないとどうなる?
長い間、調律をサボってしまったピアノに起きる主な症状3つを下記で解説します。
音がおかしい | 弦が切れている |
鍵盤が動かない | 部品が消耗している |
内部がぼろぼろ | 環境変化で劣化している |
上記の表を見て分かるように、ピアノを触ってみれば自身で原因が分かる場合があります。
それぞれの症状による、解決策は以下の通りです。
音がいつもと違う場合、音程が下がっているところから元に戻そうと調律をすると弦が切れるなどリスクを伴います。
ピアノに大きな負担がかかり弦が痛む可能性があるからです。
音色に違和感を感じた場合は、調律を数回に分けて少しずつ元に戻していくと良いでしょう。
鍵盤が動かない場合の原因として挙げられるのは、ピアノの内部に使われているフェルトの消耗です。
鍵盤に使われているクッション材は、湿気で膨張し動きが鈍くなることがあります。
調律師にフェルトの交換を依頼しましょう。
また、久しぶりに調律師に見てもらったら内部が劣化していたパターンもあります。
ピアノ部品が傷んだり、虫食いによって木材がぼろぼろになったりするのは、ピアノが高い気温や湿度に弱いことが原因です。
ピアノの設置位置や、防虫剤などの対策をすることで劣化の予防ができるので環境の変化に気をつけましょう。
調律の基本的な手順
ピアノの調律は状態によって手順は変わることもありますが、調律師が行う基本的な工程は以下の通りです。
- 状態チェック
- 調律
- 整調
- 整音
- 最終チェック
それぞれの手順と方法を詳しく解説します。
状態チェック
状態チェックは、鍵盤の動き、音の響き、べダルの状態などを見ます。
問題を把握して、作業内容をプログラムしお客様に説明をしてから作業開始です。
調律
調律は音叉(おんさ)という道具を使用し、ぴったりと音に合うようにチューニングをします。 音叉から出る音を基準に12音に振り分けた後、さらにオクターブごとに調整します。
整調
整調は、各部品の動き方を見て音の出方が良くなるように調整する作業です。
フェルトやクロスの消耗、湿気による木材の膨張などが原因で、鍵盤などの動き方にズレが生じます。
そのため、消耗品の交換や部品の位置調整などの工程は、音色や響きに影響する大切な作業です。
整音
整音は、硬くなった音を元の音色に整える作業です。
ピアノは音を鳴らすときに、羊毛で出来たハンマーを弦に叩きつけます。
ピアノを使うほどハンマーは硬くなり、柔らかかった音色も硬く変化し響きません。
そのため、針でハンマーを刺したり、紙やすりをかけたりして音色を整えます。
最終チェック
最後に、全体のバランスを確認します。
外装を戻して汚れをふき取ったあと、お客様に作業内容や今後のメンテナンスの説明をして終了です。
調律師さんが訪問した際のマナー
自宅のピアノを調律師にお願いする場合は以下の3点を意識しましょう。
- お茶
- 空調
- 掃除機
簡単に用意ができて、調律師のためになるマナーを理解していれば、お互いに気持ちよく作業を進められるでしょう。
おすすめの上記3点を詳しく解説します。
お茶
調律師にお茶を出したほうがいい?と悩んだ時は、是非出してあげてください。
ただし、ペットボトルの飲み物を渡すことをおすすめします。
なぜなら、次のスケジュールのため、時間内に作業を終わらせる必要があり、ゆっくり飲んでいる時間があまりないからです。
ペットボトルであれば、移動時間に飲んでもらえるので調律師も受け取りやすいでしょう。
もし、コップで出す場合は最後の説明時か、調律師が一息つける全て終わった後のタイミングがおすすめです。
空調
部屋の温度は、事前に一定にすることで作業がスムーズになります。
ピアノは、温度や湿度に敏感なため急激な温度の変化は、音程が不安定になりやすいです。
部屋の空調は調律師が来る1時間前くらいには入れておきましょう。
また、調律は寒い日でも汗が出るほど意外と重労働なので、調律師のためにも快適な環境を整えてあげましょう。
掃除機
ピアノの外装を外して内部を掃除することがあるので、掃除機を用意しましょう。
調律師は掃除機の使い方には慣れているため、どのようなタイプのものでも大丈夫です。
貸す場合はパイプ部分を外し、さらに掃除機の先端は隙間ノズルに変えて使いやすい状態にしておきましょう。
他にも「調律してもらっている間はどうしていたらいい?」「ずっと見ていないとだめなの?」など、分からないこともあることでしょう。
しかし、ずっと見ている必要はありませんし、外出しても大丈夫です。
あまり気負いせず、リラックスして任せましょう。
まとめ
調律は、あなたのピアノを長く愛用するために必要です。
調律の頻度は1年に1回を目安に調律師に依頼することが無難ですが、調律のしすぎや長期間の放置は状態を悪化させるケースがあります。
状態によって必要な頻度は変わるので、自身の持っているピアノが新品なのか古いのか、毎日使うのか使っていないのかを一度考えてみましょう。
また、調律を依頼した際に、スムーズな作業ができるよう、必要なものは何かを知っておくと安心です。
調律を初めて依頼する方は特に、最低限のマナーを心得ておくとよいでしょう。
ピアノに合った調律をすることで、何十年もきれいな音色を出すことができます。
複数の業者から自身にあった調律師を見つけ、定期的に調律をしましょう。