• 練習・楽しみ方

ピアノのフラットとシャープ|初心者でもわかりやすく丁寧に解説◎応用編付き!

Written by
2023.11.13
どるちぇ
【執筆・監修】どるちぇ

4歳よりピアノを習い、20歳より電子オルガン・コード理論を学びました。 現在は、20年以上継続している自宅でのピアノ教室で2歳からの子どもたちと一緒にピアノの練習をしています。 保育士資格を独学で取得し、保育園にて子どもたちとリトミックや季節の歌を楽しんできました。皆さまのピアノライフのお役に立てるようにピアノの魅力をたっぷりお届けします。

楽譜にはさまざまな音楽記号が表記されています。その表記された音楽記号を読み取り、音として演奏をします。
でも、ピアノを演奏していて音楽記号のルールがわかりにくく、困ったことはありませんか?
例えば、フラット(♭)シャープ(♯)ナチュラル(♮)。演奏する時どこを弾くの?何の音についているの?と迷ったことはありませんか?
「何のために付けられているのか?」「どのように読み取るのか?」
「演奏ではどうすると良いのか?」ルールがわかればストレス少なく演奏を楽しむことができますよ。

フラットとシャープの重要性

フラット シャープ 重要性

ピアノには白い鍵盤(白鍵)と黒い鍵盤(黒鍵)があります。
白い鍵盤にはドレミファソラシドの7つの音名がついています。
作曲家はイメージが広がるにつれ7つの音では足りなくなってしまい、フラット(♭)シャープ(♯)という変化記号を用いて記し、使える音を増やします。
これは、白鍵に当たる音を上げたり下げたり変化するための音楽記号で「変化記号」といい、臨時記号と調号の2種類あります。

フラットやシャープは、音楽を明るくしたり、暗くしたり、ジャズっぽくしたり、アラビアの雰囲気を出したり音楽を豊かに広げてくれる存在です。
もちろんフラットやシャープがない曲も存在します。音楽のルールから白鍵のみで作られた曲をハ長調といいます。
ハ長調は明るく真っ白なイメージの音楽と言われ、おもちゃのチャチャチャやとんでったバナナ、どんぐりころころ、大きな栗の木下でなどの童謡にも多いです。

フラットやシャープがないハ長調は、初心者の方にとって白鍵のみで演奏できるため、簡単に取り組める曲です。
ただ、曲が単調になりやすいです。
変化を生み出し音楽を豊かにしてくれるために黒鍵を使うフラットやシャープの存在は重要です。

参考資料

  • 吉松隆(2014年初版) 『調性で読み解くクラシック』、株式会社ヤマハミュージックメディア
  • 轟千尋(2014年発行) 『いちばん親切な楽典入門』、新星出版社
  • 足羽章(2014年初版) 『日本童謡唱歌全集』、株式会社ドレミ楽譜出版社

音楽の基本:全音と半音

全音 半音

フラットやシャープの説明の前に知っておきたい知識として「全音と半音」があります。
ピアノの鍵盤では位置関係のことです。楽譜や音楽のルールでは音の幅を表します。
音楽で大切なスケール(音階)では「全全半全全全半」というルールにそって音が並び、和音でも「半音を⚪︎個含む」や「全音⚪︎個分」といった全音半音の考え方が使われます。
同様に近親調と呼ばれる調の関係性を表すときにも全音半音は必要です。

参考資料

  • 吉松隆(2014年初版) 『調性で読み解くクラシック』、株式会社ヤマハミュージックメディア
  • 轟千尋(2014年発行) 『いちばん親切な楽典入門』、 新星出版社

半音とは?

ドレミファソラシドの間にも音があります。
「ド⚪︎レ⚪︎ミファ⚪︎ソ⚪︎ラ⚪︎シド」この⚪︎のところです。
なんだと思いますか?これが黒鍵(こっけん)です。
この段差を半音と言います。ピアノの鍵盤でしたら隣の鍵盤との位置関係のことです。

そして半音には、半音階(クロマティック・スケール)という音階があります。
半音階は、全て「半音」でできた音階です。
基本的に上行ではシャープを、下行ではフラットが使われます。
曲中に半音階が出てくると、楽譜はフラットやシャープの記号がたくさんかかれているので、音読みが大変という印象です。
しかし半音階は、ここぞというときにキラキラとした音として使われることが多く演奏を華やかにしてくれます。

楽譜 半音

半音を使った有名な曲は「ジョーズ」「エリーゼのために」などがあります。
半音を繰り返して使用することで、恐怖心や切なさを感じることができるでしょう。

参考資料

  • 轟千尋(2014年発行) 『いちばん親切な楽典入門』、新星出版社

全音とは?

ピアノの鍵盤では、1つ飛ばした鍵盤の位置関係です。
「ド⚪︎レ⚪︎ミファ⚪︎ソ⚪︎ラ⚪︎シド」では、ひとつ飛ばしの音になります。
半音とは違い全音は、ふわっとしたイメージの響きです。
全音にも全て「全音」でできた全音音階があり、魔法がかかったような不思議な響きが特徴です。
「チャルメラ」は全音音階を繰り返したもので、メロディーは印象に残りますよね。

全音

フラットとは?

楽譜 フラット  
フラット記号の紹介

フラット(♭)は楽典(音楽のルール)では「記号がついている音を半音下げる」と説明されています。
日本語では「変」という漢字を使ってフラットを表します。
フラットの役割は2種類あり、調号として、臨時記号としてです。
ナチュラルがついたら元の高さにもどします。
ナチュラルとは、本位記号とも呼ばれフラットやシャープのききめを消して元の高さにもどす音楽記号です。

楽譜での表記

臨時記号としてのフラットは、音符の「たま」の左側(上記画像)につけられます。
楽譜は左側から読み進めます。一瞬で音符の情報を読み取れることが理由です。
また、音符には「線の音、間の音」の2種類があります。
線の音か間の音どちらにフラットがついているのかを見分けることで「何の音についているのか」が分かります。
フラットの真ん中のぷっくりとした半分の丸のような部分に直線(五線の線)があれば「線の音」、直線がなければ「間の音」と判別します。

もう一つのフラットの役割である調号では、ト音記号やヘ音記号である音部記号と拍子の間に表記されます。
表記される五線上の位置や順番にもルールがあります。

鍵盤上での位置

フラットはピアノの鍵盤では、記号がついている音の「左どなり」を弾きます。
注意点は「フラットは必ずしも黒鍵を弾くのではない」ということです。
左どなりの鍵盤つまり半音下の鍵盤になるので、「ファ」の鍵盤の半音下「ミ」の白鍵を弾きます。

シャープとは?

楽譜 シャープ  
シャープ記号の紹介

シャープ(♯)は楽典(音楽のルール)で「記号がついている音を半音上げる」と説明されています。
日本語では「嬰(えい)」という漢字を使ってシャープを表します。
シャープもフラットと同様に調号、臨時記号としての2種類の役割があり、ナチュラルがついている時は、もとの高さにもどしましょう。

楽譜での表記

臨時記号のシャープは、フラットと同様に表記される位置は音符の「たま」の左側です。
シャープの形の中央四角の部分に直線が「見られるか」「見られないか」で、何の音にシャープがつくのか?を判別します。

調号でもフラットと同様に、音部記号と拍子記号の間に表記され、五線の位置や順番にルールがあります。

鍵盤上での位置

シャープはピアノの鍵盤では、記号がついている音の「右どなり」を弾きます。
シャープについても必ず黒鍵を弾くわけではないことに注意が必要です。

楽譜のフラット・シャープはどこまで有効?

楽譜 有効

フラットやシャープがついた音はずっと「つけ続ける」のでしょうか?

調号としてのフラットやシャープは、ナチュラルがついたり転調(曲中で調性が変わること)しない限り、決まった音に対してフラットやシャープは有効です
この場合、高さの違う同じ音名でもフラットやシャープはつけましょう。
ト音記号とヘ音記号では調号の付く位置が違いますので、注意が必要です。

臨時記号の場合、同じ小節内であれば同じ高さの音にフラットやシャープを、つけて弾きます。
高さが違う同じ音名に対してはつきません。
小節が変わったらフラットやシャープはつけませんが、タイで繋がっている場合は小節をまたいでもフラットやシャープは有効です。

フラットやシャープが有効な時

調合 臨時記号
決まった音名全てに有効
(高さは関係ない)
記号のついた音に対して
同じ小節内のみ有効
タイで繋がっている場合は
小節をまたいで有効
 

フラットやシャープが有効でない時

調合 臨時記号
ナチュラルがつく時 ナチュラルがつく時
転調した時

参考資料

  • (2006年初版)『ミッキーといっしょ楽譜の約束』、株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス出版部

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ピアノ初心者が演奏で迷ってしまう時とは?

初心者 迷う

フラットやシャープについて、初心者がピアノ演奏時に迷ってしまう事例と練習方法をご紹介します。

何の音にフラットやシャープがついているのかわかりにくい

練習方法は以下のものがあります。

調号の場合

  • スケールやカデンツ(和音進行)を弾くことでフラットやシャープの音を耳でも聴いて確認する
  • 視覚的にもわかりやすくするために、楽譜にしるしをつけてみる

臨時記号の場合

  • 「線の音」「間の音」を理解する
  • 自分で五線にフラットやシャープを書いてみる
  • 知っているメロディを使ってフラットやシャープがつく場合の音の変化を耳で確認する

特に「書くこと」でフラットやシャープの位置が確認しやすくなります。

どこの鍵盤を弾けばいいのかわからなくなる

実際の演奏でどこの鍵盤を弾けば良いのか迷うことがあります。

  • フラットは半音下がる、シャープは半音上がる、鍵盤上での方向を理解する
  • 半音階を弾いて「半音」の鍵盤の幅や位置、動きに慣れる
  • あらかじめ鍵盤図にフラットやシャープがついたときに弾く位置を楽譜にメモをして、いつでも確認できるように準備する

生徒さんからの質問事例

写真をご覧ください。実際に生徒様から質問があった曲の一部です。
このような場合、どちらの音にシャープがついているのかわかりにくいですよね。

シャープ どっち

これは「ソ」の音にシャープがつきます。
4分音符や2分音符など音符の種類が違っても同じ高さの音であるためシャープは有効になります。
フラットについても同様です。

「異名同音がある」

フラットやシャープには「異名同音」というものがあります。
漢字の読み方は違いますが、弾く音は同じという意味で、転調の際に見られます。
さっきまでフラットだった音が、次はシャープになるけど弾く音は同じであることを知っておきましょう。

楽譜にフラット・シャープが2つある場合は?

フラット・シャープ 2つある場合

フラットやシャープは音符に対して1つとは限りません。
今回は、2つフラットやシャープがつく場合をご紹介します。

ダブルフラット

半音下げた音をさらに半音下げるための記号です。
重変記号とも呼ばれます。半音分2回下げるということは、全音分下げることと同じです。

ダブルシャープ

半音上げた音をさらに半音上げるための記号です。
重嬰(じゅうえい)記号とも呼ばれます。半音分2回上げるということは、全音分上げたことと同じになります。

参考資料

  • (2006年初版)『ミッキーといっしょ楽譜の約束』、株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス出版部

応用編:フラットとシャープを活用

フラット・シャープ 応用

フラットやシャープについてもう少し詳しくご紹介します。

長短の変化

ドミソ(コードネームC)の音を弾くときに、真ん中の「ミ」の音にフラットをつけると暗い音に変化します。
同様にドミソシ(コードネームCメジャーセブン)の音の「シ」の音にフラットをつけると引き締まった緊張感のある属7(コードネームC7)に変化します。
フラットやシャープをつけることで響きを変えられます。
曲を豊かにしてくれることがハーモニーの役割です。

調号について

調号に使われるフラットやシャープはルールに従って順番が決まっています。
実際に楽譜には、6つまで使われています。それ以上になると楽譜が読みにくくなるためです。
異名同音を使ってフラットやシャープを入れ替えます。
作曲家は表現したいイメージを調号を用いて調を変化させて表現しました。
例えばニ長調(シャープがファとドにつ)では、神を連想させるような祝祭的な神々しいイメージの響きの音であり、ハ短調(フラットがシとミとラにつく)では24調ある調性のうちで一番暗いイメージの音と言われています。
ベートーヴェン作曲の「運命」はこの暗いイメージのハ短調です。
人によって感じ方はさまざまですが、シャープ系の曲は鋭いイメージ、フラット系はマイルドなイメージがあるとも言われています。

参考資料

  • 吉松隆(2014年初版)『調性で読み解くクラシック』、株式会社ヤマハミュージックメディア

まとめ

フラット・シャープ まとめ

ピアノは弾き始めたら最後まで止まらずにスムーズに弾きたくなります。
あらかじめ調べたことを楽譜にメモしておくことで、振り返りや音楽知識を思い出しやすくなるためストレス少なくピアノ演奏の練習に取り組めるでしょう。
今回のフラットやシャープ、ナチュラルについての役割や知識をあなたのピアノライフにぜひご活用ください。

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