クラシックピアノをこよなく愛するフリーライター。子どものころピアノを習うも挫折。それでもピアノへの愛着は捨てられず、ピアノ曲を聞いたりコーラスを通してピアノと関わっています。一人でも楽しめるだけでなく、オーケストラの代役にもなるピアノの魅力を、記事を通し伝えたいと奮闘中。
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楽譜にある数字にとまどっていませんか? 音符の上に当たり前のように書かれている数字。これは指番号といって、指を指定することで曲を弾きやすくするためにあるものです。
でも、指番号が気になってかえって弾きづらく感じてしまう方も多いようです。 指番号は分かっても、上手く動かせなかったり、なぜこの番号になるのか分からなかったりとなんとなくモヤモヤを感じている方も多いのではないでしょうか? 私も初心者のころは煩わしく感じていました。 しかし、曲が難しくなるにつれて、どう指を動かしたら滑らかに弾けるのかという判断が難しくなります。 そんなとき、指番号どおりに弾くとすんなり弾くことができるんです。
今回はピアノ演奏で一番大切な指使いについて解説していきます。 正しい指の動かし方、指番号を知ればピアノの上達も早くなりますので、ぜひ、お読みくださいね。
ピアノは指のどこで弾くの?
ピアノは指先に近い腹の部分で弾きます。
指先に近い腹の部分で弾くためには、手の形から決める必要があります。
- 手の中に卵が入っているような形
- 指先が自然に円くなっている形
手の中に卵が入っているような理想的な形にする簡単な方法があります。
- まず、肩から指先までの力を抜く
- 力を抜いたまま、手を幽霊のように鍵盤の上まで持ち上げる
- そのままの形で鍵盤に手を置く
どうでしょうか? 指先が自然に円くなり、指先に近い腹の部分が鍵盤についていませんか?
このときに指が鍵盤に触れている部分でピアノを弾きます。
指の腹をべたっと鍵盤につけてしまうと、指が動きづらく音も一本調子になってしまうだけでなく、手首にも負担がかかってしまいます。
ピアノに置いた手の形や指の位置が適切な状態になっていると、ピアノでの表現も豊かになりますので、初心者のうちにマスターしておきましょう。
ピアノの運指は基本のキ
ピアノの鍵盤は88あります。 でも、指は10本しかありませんよね。
10 本で届かない音域は手を移動させなければなりません。 手の移動が多くなれば、当然、ミスタッチのリスクも増えていきます。 そこで、10本の指を効率良く動かすことで音域の広い曲も滑らかに弾けるようにと考えられたのが運指です。 運指の基本を押さえておくと、楽譜にある指番号の便利さにも気づけますよ!指番号とは
そもそも、指番号がわからない方も多いと思います。 まず、それぞれの指番号から解説しましょう。
指の番号は以下のように決まっています。
親指 | ① |
---|---|
人差し指 | ② |
中指 | ③ |
薬指 | ④ |
小指 | ⑤ |
楽譜の音符に振ってある番号はこの指番号です。 指番号どおりに弾くと、無理なく弾けるようになっていますので、指番号は初心者のうちにしっかりと身につけてしまいましょう。
運指はなぜ重要なのか?
運指はなんの為にあるのかを記載してください!
音符どおりに弾くだけでも初心者のうちは大変なのに、運指なんて面倒くさく感じてしまうかもしれません。 しかし、ピアノを上達させていきたいなら、運指は重要です。
運指が重要な理由は次のとおりです。
- 曲が滑らかに弾ける
- 曲が弾きやすくなる
- 手や腕に負担がかからない
- 正確なリズムで弾きやすい
- 速い曲でもスムーズに弾ける
広い音域を10本の指で弾くには、無理のない動きで指を動かす必要があります。 指番号はスラスラ弾くための目安として書かれています。 絶対にその指を使わなければならないというわけではないのですが、指番号のとおりに弾いてみるとさらっと弾けるので、私は指番号どおりに弾いています。
参考:ピアノが上手になるレッスン方法①指使いの基本を解説 | JAM MUSIC
ピアノの基本〜指の動かし方
運指の基本として1オクターブを弾く運指から練習を始めてみましょう。 オクターブを弾く運指は、音域が広くなっても応用がききますので、ぜひ、習得してくださいね。 それでは、右手と左手それぞれの方法を解説します。
右手
右手で1オクターブを弾く方法は、ドレミまでは順番に弾きますが、ファに移るときに指くぐりがあります。
右手で1オクターブを弾く運指表はこちらです。
音階 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
指番号 | 1 | 2 | 3 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
- 右親指をドに置き、ドの位置から順番に指を置いていく
- 親指からドレミまで弾いたらファは中指の下をくぐって(ファを親指で弾き)ソラシドを弾く
指くぐりをするときには、手首をあまり動かさずに指だけをくぐらせましょう。
左手
左手で1オクターブを弾く方法は、ドレミファソまでは順番に弾いていき、ラを弾くときに指またぎをしてラシドを弾きます。
左手で1オクターブを弾く運指は以下のとおりです。
音階 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
指番号 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 3 | 2 | 1 |
- 左親指をドに置く
- 小指から順番にソまでを弾いたら、親指を中指でまたいでラを弾く
- そのまま人差し指、親指でシ、ドと弾く
手首の高さをあまり変えることなく指またぎができるように練習しておくとよいでしょう。
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原則で決まっているルールはあるの?
運指の原則として決まっていることは3つあります。
- なるべく動きを少なくする
- 親指は白鍵を弾く
- 同じ音を同じ指で連続して弾かない
原則といっても、窮屈なものではなく滑らかに美しい演奏をするための決まりです。
なるべく動きを少なくする
途中で指が足りなくなって手全体を移動させるという動きはミスタッチやリズムが崩れる原因となりがちです。 指番号どおりに弾くことで、無理なくスムーズに弾けます。
親指は白鍵を弾く
黒鍵を親指で弾こうとすると、手首の位置が動いてしまい動きが大きくなってしまいます。 曲が上級へ進むにつれて、親指が黒鍵を弾くこともありますが、初心者のうちは親指は原則白鍵を弾くことになります。
同じ音を同じ指で連続して弾かない
同じ音が連続して続く場合、あえて指を変えて連打することがあります。 「同じ音なら同じ指でいいんじゃないの?」と思う方も多いと思いますが、指を変えるメリットがあるんです。
- 指を変えた方が速く弾ける
- 手首に負担がかからない
- 安定した音になる
鍵盤を弾くときは、指で鍵盤を「捉えて」「押す」「離す」という動きがあります。 同じ音を指を変えて連打すると、最初の一打のときに手首を動かすだけで、あとの2打は指だけ動かせば弾けてしまいます。 つまり、一音を弾くアクションで連打できてしまうのです。
同じ指で連打すると鍵盤を下へ押そうとする力が強く働いてしまいます。 ピアノは鍵盤から指が離れるスピードも重要です。押す力とのバランスが悪くなると思うような速さで連打ができません。 結果的に動きが鈍くなり、音の粒が揃いにくく手首にも負担をかけてしまいます。
このようにピアノの運指は窮屈に感じるかもしれませんが、ピアノを無理なくスムーズに弾くようにするための秘訣みたいなものなのです。
【ピアノ上達への近道】運指練習のコツ5選
ピアノの上達のためには、運指が重要です。 毎日コツコツと練習を積み上げていくことで、指の動きが滑らかになります。
運指練習のコツ5つは次のとおりです。
- 手首、指のストレッチをする
- 片手ずつ練習する
- 両手で練習する
- 音階の練習をする
- 指使いの練習になる教本で練習する
それでは、それぞれ解説していきましょう。
手首・指のストレッチをする
指を滑らかに動かすための準備運動をします。 ストレッチをしてから練習すると、運指が楽になるだけでなく腱鞘炎などのトラブルを防ぐ効果が期待できます。
ポイントは2つです。
- 伸筋・屈筋をストレッチする
- 指の間をストレッチする
それぞれのやり方を解説しますね。
伸筋・屈筋のストレッチ
指先は手首から前腕にかけての筋肉が動かしていることをご存じですか? 正確には、手のひらと手首から前腕にかけての筋肉から伸びた腱が指をうごかしています。
そこで、練習前に前腕のストレッチをしておくと、指の動きも楽になってきます。
- 蓋をしたピアノの前に座り、背筋を伸ばして力を抜く
- ピアノの蓋の上にピアノを引く形で手を置く
- 呼吸をしながらゆっくり手首を起こして手の甲側をストレッチする(このとき手のひらは自分のほうを向いている)
- 元の位置に手を戻す
- 続いて指先を蓋の端にずらしてゆっくり手をそらしてストレッチする
以上の手の甲と手のひらのストレッチを交互にしましょう。 くれぐれも無理をせず、気持ちよく感じるところまでストレッチするのがコツです。
指のストレッチ法
続いて指のストレッチをします。
- ピアノの前にすわる(蓋は閉めておく)
- 指だけ蓋の上にのせておく
- 背筋を伸ばして力を抜く
- 左右の小指から蓋のカーブに沿って下げて下へストレッチする
- 元の位置に指を戻し、次に左右の薬指を蓋のカーブに沿って下へ伸ばす
- 順番に親指までのストレッチをする
ストレッチするときは、背筋を伸ばして無理のない範囲でおこないましょう。
片手ずつ練習する
弾いていても一音一音がはっきり響かないことはありませんか? 指がうまく動かないと、呂律がまわらないような曲になってしまったり、リズムが変になってしまったりします。
そこで、片手ずつの練習をすると、自分の運指のどこに問題があるかが分かってきます。
- 集中できる
- どこが悪いのかがわかる
片手だけで練習をすると自分のどの指が動きづらいのかがわかるので、そこを集中的に練習できます。
両手で練習する
片手でスムーズに弾けるようになったら、両手で練習してみましょう。 特に音が流れてしまう場所やリズムが崩れる場所は集中的に繰り返し練習するのがおすすめです。
チェックするポイントは2つです。
- 一音一音がきれいに響いているか
- 左右の音のバランスがとれているか
指の力が鍵盤に伝わっているかどうかがポイントです。 音を聞きながら、どの指が動きづらいのかを確認しましょう。
特に苦手な部分は、速さを少しゆっくりにして練習を積み重ね、慣れてきたらスピードを戻していくという方法が着実に上達するのに有効です。
音階の練習をする
ドレミファソラシドを滑らかに弾く練習もおすすめです。 ピアニストの清塚信也さんも、YouTube動画のなかで「音階は基礎中の基礎」と言われています。 音階は順番に鍵盤を押せばいいので、指使いに集中して取り組めるところがいいですね。指くぐりや指またぎをくり返し練習できるのもおすすめポイントです。 指くぐりや指またぎがスムーズにできるようになれば、ピアノを弾くのが楽しくなりますよ。
指使いの練習になる教本で練習する
指使いの練習のために書かれた教本を使う練習方法もあります。 教本としては『ハノン教則本』が有名です。 ハノンの特徴は次のとおりです。
- 10本の指をまんべんなく動かす練習ができる
- 一定のテンポで弾く力がつく
- 同じパターンのくり返しの曲になっている
ハノンはもともと指使いの練習として書かれているため、練習曲事態を楽しむという性格のものではありません。 そのため、つまらなく感じたり、飽きてしまったりということになりがちです。 初心者には少しとっつきにくい教本かもしれません。 そんな方には『無理のない指のトレーニングのために大人からはじめるハノンピアノ教本』がおすすめです。 練習曲の核となる部分だけを練習できる工夫や、指を痛めないためのポイントなどについても解説していますので、一度手にとってみてはいかがでしょうか。
ピアノの指使いの練習は上達への近道
ピアノの音をきれいに響かせるには、指使いがとても重要です。 運指は上達するために一番大事な基本の部分なので、しっかりと身につけていきましょう。
楽譜にある指番号は、88鍵あるピアノを10本の指で弾きこなすための目安となる便利な番号です。 指番号のとおりに弾けば、思いがけなくすんなり弾けることに気づけると思います。
正しい手の形で指先に近い腹の部分で弾いているかを確認して、練習を積み重ねていきましょう。 基本ができてくると上達も早くなりますので、ぜひ、参考になさってくださいね。オススメ記事
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