クラシックピアノをこよなく愛するフリーライター。子どものころピアノを習うも挫折。それでもピアノへの愛着は捨てられず、ピアノ曲を聞いたりコーラスを通してピアノと関わっています。一人でも楽しめるだけでなく、オーケストラの代役にもなるピアノの魅力を、記事を通し伝えたいと奮闘中。
目次
「ピアノを設置したら床が抜けるなんてことはないのかな?」
こんなお悩みありませんか?
戸建ての自宅やマンションにピアノを設置するにしても、床の補強が必要かどうかは気になりますよね。
そこで、今回はピアノを設置するにあたって、床の耐性の調べ方や床の補強が必要な場合について詳しく解説していきます。
対策やチェック方法を知って安心してピアノを自宅に迎えましょう!
ピアノの種類とその重さ
ピアノは大きく分けて3種類あります。
- アップライトピアノ
- グランドピアノ
- 電子ピアノ
まずはこのピアノの種類別の特徴と重さから解説します。
アップライトピアノの特徴と重さ
アップライトピアノは、家庭向きのコンパクトなボディが特徴です。
アップライトピアノの特徴
- 弦が鉛直方向に張られている
- デザインが豊富でインテリアに合わせて選べる
- 標準的な大きさは、横幅:約150cm 奥行:約60cm 高さ:約120~130cm
モデルによっては113〜114cmほどの高さのコンパクトなアップライトピアノもあります。
アップライトピアノの重さ
- 重量は200~250kg程度
だいたい、体重60㎏の人が4人ほどの重さになりますね。
グランドピアノの特徴と重さ
グランドピアノはコンサートホールの演奏に適しています。
グランドピアノの特徴
- 弦が水平に張られている
- 鍵盤のレスポンスが早く表現力豊かに演奏できる
- 標準的な大きさは、高さ:100cm前後 幅:約150cm 奥行:約150~220cm前後と幅がある
グランドピアノの重さ
- 255~410kg
体重60㎏の人が4人から5人ほどの重さですね。
電子ピアノの特徴と重さ
電子ピアノは音の調節ができるので、マンションでも使いやすいピアノです。
電子ピアノの特徴
- 設置スペースが小さい
- 音量を調節できる
- 導入コストが安い
- 調律が不要
- 機能が豊富
電子ピアノは鍵盤のみのタイプや、アップライトピアノのようなしっかりしたものまでバラエティにとんでいます。
電子ピアノの重さ
- 22.5kg~89kg
- 重くても90kg程度
アコースティックピアノほど重くないですね。
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家の種類と床の耐性
それでは、具体的に床の耐性についてみていきましょう。
建築基準法施行令第85条では、住宅の居室の積載荷重量は1㎡あたり180kgと定義されています。
180kgとなると、体重60㎏の大人が3人分ですよね。
ちょっと不安になった方も多いのではないでしょうか。
でも、ピアノに限らず大きな食器棚やタンスなど重さのある家具は多くありますし、大人が10人立っても床が抜けることはないですよね。
積載荷重量は1㎡あたりの数値なので、4㎡の広さであれば720kgまで支えられることになります。
ピアノを設置しても床だけで物を支えているのではなく、家全体で支えているのでよほどのことがない限り大丈夫です。
次に、木造住宅、マンション、古屋・伝統的家屋の床の特性について解説していきましょう。
木造住宅の床の特性
一般的な住宅の床には2つの工法があります。
- 根太工法(ねだこうほう)
- 剛床工法(ごうしょうこうほう)
それぞれの特徴をみていきましょう。
根太工法
床を支えるための「 根太(ねだ)」「 大引 」「 床束(ゆかづか)」で構成されて:株式会社 都築建築 過去の建築仕様よりいます。
床束で支えられている大引きと根太が格子状に組まれていて、その上に床板が張られています。
以前はすべて木材で作られていましたが、現在は鋼製や樹脂製のものが使われるようになりました。
メリットは振動や騒音を減らす効果があることです。
デメリットは、根太と大引きが格子状に交わる点に負荷がかかるため、剛床工法より強度はありません。
床を支える構造部分のことです。
大引きを支え、束石などに荷重を伝えます。大引と同じか、やや小さい木材を用い、基本的に大引と、かすがい(先端の尖ったコの字状の金物)で留めます。
引用:LIXIL「床束とは?」
剛床工法
根太を使わず厚みのある床板を直接張る方法です。
メリットは床全体で支える構造になるため、強度が強くなります。
デメリットとしては、根太がなく太鼓のような構造のため音が響きやすくなってしまうことです。
マンションの床の特性
マンションの床には2つの工法があります。
- 乾式二重床
- 直張りフロアー
それぞれの工法は以下の図のとおりです。
引用:MANSION+
スラブとは、コンクリートの板のことで鉄筋コンクリートの建物の床部分に使われます。
マンションのような集合住宅では遮音性を考えて20cmほどの厚さで作られています。
乾式二重床は、スラブと床の仕上げ材の間に支持脚を立ててすき間を作る方法。
すき間に配管や配線などを設置でき、配管や配線などの修理がしやすいのが特徴です。
デメリットは、すき間があることで子どもが飛び降りるなどの音が太鼓のように増幅されて階下に伝わりやすいことです。
直張りフロアは、コンクリートに直接床材を貼る工法。
コンクリートの上に支持脚を立てないため、床が高くならず天井に高さを出せます。デメリットとしては、コンクリートの厚さによって遮音性が下がる場合があることです。
今お住まいのマンションの床の工法を確認するポイントは以下のとおりです。
【床の見分け方】
直張りフロア | ふかふかする踏み心地 サッシのレールの下枠が床より10cm以上高い |
---|---|
乾式二重床 | コンコンという音がする |
サッシレールの下枠部分が床より10cm以上高く設置されている場合、直床の可能性が高いです。
しかし、これはあくまでも目安ですので、最終的な判断は専門家にお任せしましょう。
古屋や伝統的な建物の床の特性
築50年以上の家屋や伝統的な建物の床の特性は次のとおりです。
- 木材の板張り
- 木材同士を組み合わせることで耐久性を高めている(木造軸組み工法)
特に伝統的な民家のなかには、柱と梁を組み合わせて建物を建てているものがあります。木材同士のつなぎ目に金物を使わないため、家が長持ちします。
デメリットとしては、床下が土になっているため、湿気により木材が腐食するリスクがあることです。
床補強の基本
実際にピアノを設置するにあたって床補強の必要性がある場合とは何か、床補強する場合、どのような流れなのかについて解説していきます。
床補強の必要性
建築基準法の積載荷重を守って建てられている家屋に関しては、床補強の必要性はないと考えてよいでしょう。
しかし、築年数や床下の環境により必要になる場合もあります。
床がたわんでいたり、床がきしむなどの状態に気がついたら、専門家にきちんと調べてもらうのがおすすめです。
床補強の必要性のある場合
- 床がたわんでいる
- 床がきしむ
- 築年数が古い
- 床下の環境が整っていない
床下にコンクリートの打設がなされていなかったり防湿シートなどの対策がされていなかったりした場合、木材が腐食する可能性があるのでチェックしておくと安心です。
床補強の方法とその流れ
補強の方法としては次のような方法があります。
- 根太を増やす
- 根太を太くする
- 床材を厚くする
- 床束を多く設置する
補強する際の流れは次のとおりです。
1. 床材をはがす
まずは現在の床材をはがします。
2. 下地をチェックする
床材の下に隠れていた下地の状態をチェックし、必要に応じて補修する。
床下の土がむき出しになっているようなら、コンクリートを打つなどの作業をします。
3.補強する
状態に応じて根太を増やす、根太を太くする、床束を増やす、床材を厚くする対策を施します。
4. 新しい床材を張る
下地の処置が済んだら床材を張ります。
床材には、「合板材」と、天然木をそのまま使った「無垢材」の2つがあります。ほかにも、防音効果や断熱効果を強化したものなどありますので、状況に合わせて選びましょう。
引用:BXゆとりフォーム
専門家の協力の重要性
ピアノの設置場所の床補強は、DIYでするよりも専門家と協力してすすめましょう。
素人では判断できない床のたわみなども測定して判断するので、しっかりとした補強が可能です。
また、大引きの間隔や根太の太さなど具体的な方法についても、専門知識が必要になります。
ピアノ設置後にトラブルになる前に施工会社やマンションの管理会社などに相談するのがおすすめです。
ピアノを設置する際のチェックポイント
ピアノを設置する際は、基本的に床の補強は必要ありませんが、快適にピアノを使用するためのチェックポイントがあります。
- 設置に適した場所
- 搬入経路
- 床に負担をかけない設置
それではこの項目について1つずつみていきましょう。
設置に適した場所
ピアノは環境の影響を受けやすい楽器のため、温度や湿度の変化が少ない場所が適しています。
次のような場所は避けましょう。
場所 | 理由 |
---|---|
子の高さが合っていない | 直射日光、温度・湿度の変化が激しい |
水回り付近 | 湿気がこもりやすい |
エアコン等の近く | 温度変化が激しい |
隣家との境の壁際 | 音が伝わりやすい |
これらのことから、ピアノの設置に適した場所は部屋と部屋の間仕切りになっている壁際などがよいでしょう。
壁際に置く際は、湿気がこもらないように壁から15cm~20cmほど離して設置するのがおすすめです。
ただし、ピアノを置く部屋にすでに大きな書棚などがある場合、床の補強が必要になることもあります。
その場合は専門家に相談しましょう。
搬入経路
ピアノを運び込む搬入経路もチェックしておきましょう。
ピアノは大きく重い楽器なので、移動する経路にも十分な幅と広さが必要です。
玄関から入れるのか、2階に直接搬入するのかなど検討しておく必要があります。
床に負担をかけない設置方法
引用:KITASHOJI
床の補強が必要ないといっても、せまい範囲に重量を集中させないようにして設置すると安心です。
ピアノを設置する前にシートやボードを敷いてその上に設置することで、ピンポイントにかかる重量を分散できます。
- ピアノの下に専用のボードやピアノの脚やキャスターごとはめ込むインシュレーターなどを使用する
- 防音マットなどを設置する
マンションなどでは、フローリングに直接設置した場合、騒音トラブルになる可能性もあるので、防音対策も兼ねてマットやシートを敷くのがおすすめです。
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2階にピアノを設置する際の注意点
2階にピアノを設置する場合の注意点は次の3つです。
注意点 | チェックポイント |
---|---|
築年数 | 40年以上経っていないか |
2階の家具の配置 | 大型家具が集中していないか |
床の状態 | 床がたわんでいないか、シロアリなどの被害がないか |
築年数が50年を超える住宅は古屋に分類されます。
十分な耐久性が得られない場合がありますので、専門家に相談しておくと安心です。
また、2階に大型の水槽がある、ウォーターベッドがあるなど重量のあるものが多い場合、床の強度を超えてしまう可能性があります。
特にグランドピアノの場合は、耐荷重の限度を超える可能性もありますので、事前に確認しておきましょう。
築年数が浅くてもシロアリの被害などで傷んでいる場合もあります。
床がブカブカする、床がたわんでいるというような状態があれば、専門家に相談しましょう。
設置が可能になった場合でも、ピアノの重量を分散させる対策をしておくと安心です。
- 大型家具が集中しないように配置を変える
- ピアノの下にボードやインシュレーターを設置する
専門家と相談しながら、対策をして安心してピアノを楽しめる環境にしましょう。
よくある質問
それでは、よくある質問にお答えします。
床がギシギシする場合はどうしたらいい?
床がギシギシする原因としては次のようなことが考えられます。
- シロアリの被害
- 経年劣化による床材の傷み
- ピアノを支えられない構造
原因はさまざまありますが、床が傷んでいることには変わりがないので早めに施工会社や管理会社に相談しましょう。
ピアノ設置後の床の状態チェック方法は?
ピアノ設置後、すぐには変化がなくても数年経つうちに状態が悪化する場合があります。
床の状態をチェックする方法は5つです。
- 床が傾いている気がする、ボールが勝手に転がる
- 家具と壁のすき間が大きくなっている
- 扉が勝手に開いたり閉じたりする
- 壁や天井にひびが入っている
すべてがピアノのせいではありませんが、このような症状がみられたら床や家にダメージがあります。
早めに専門家に相談しましょう。
ピアノの重さから床を守るには専門家との協力が必要
自宅にピアノを設置するなら、床の状態を確認しておく必要があります。
基本的に床の補強は必要ありませんが、次のような場合は専門家に相談しましょう。
- 築年数が古い
- 2階にピアノを設置する
- 床材が傷んでいる
補強するまでではなくとも、ピアノの重量を分散させるよう工夫することで床を守ることもできます。
- ピアノの下にボードやインシュレーターを敷く
- 大型家具が集中しないように配置する
専門家に相談しながら適切なピアノ設置をして、長く楽しめる環境を作りましょう。