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ピアノの歴史年表|現在のピアノの誕生までを分かりやすく解説!

Written by
2023.08.03
かしま あづみ
【執筆・監修】かしま あづみ

クラシックピアノをこよなく愛するフリーライター。子どものころピアノを習うも挫折。それでもピアノへの愛着は捨てられず、ピアノ曲を聞いたりコーラスを通してピアノと関わっています。一人でも楽しめるだけでなく、オーケストラの代役にもなるピアノの魅力を、記事を通し伝えたいと奮闘中。

ピアノは学校の音楽の時間や音楽会には欠かせない身近な楽器です。
ピアノはヨーロッパに起源を持ち、時代の変化や音楽の発展にしたがって進化してきました。
ピアノの歴史は音楽の歴史でもあります。
そこで今回は、ピアノの先祖となる楽器が、次第に現在のピアノへと進化していく歴史をひもといていきます。
個性的なピアノがたくさん出てきますので、お楽しみに!

簡単で分かりやすいピアノの歴史早見表

簡単で分かりやすいピアノの歴史早見表
年代 13〜14世紀 15世紀 18世紀 18世紀末~ 19世紀初頭 19世紀半ば 1900年 1902年 1907年 1960年代 1973年 1974年 1976年 1981年
ピアノの変遷 ピアノの前身
「クラヴィコード」
「ハープシコード」:イギリス
「チェンバロ」:イタリア
「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」
初期のグランドピアノ誕生
初期のスクェアピアノ誕生
スクウェアピアノ全盛期
ヨーロッパ各地でグランドピアノが制作される
アップライトピアノが考案される
現在のピアノに近い形となる ヤマハが国産の
アップライトピアノを製造
ヤマハが国産の
グランドピアノを製造
電子ピアノが誕生 アレル・オルガン・カンパニーが
「RMIエレクトラピアノ」を発売
国産の電子ピアノEP-10発売 タッチセンスつきの電子ピアノが発売 ヤマハが電子ピアノを発売 電子ピアノの音源がデジタル音源となる
特徴
  • 音が小さい
  • ビブラートがつけられる
  • 強弱がつけられる
  • テーブルの上に置いて使用
  • 旅行先にも携帯可能
  • 音が小さい
  • ハープやギターのような音
  • 強弱がつけにくい
  • 調律がくるいやすい
  • 5オクターブから5オクターブ半
  • ピアノの原型が誕生
  • ハンマーで弦を叩いて音を出す
  • 強弱がつけられる
  • 産業革命によってピアノが一般にも普及する
  • シーボルトにより日本にピアノがもたらされる
  • コンサートホールでの演奏に堪えうる楽器となる
  • 家庭用として用いられたスクウェアピアノが衰退
  • アップライトピアノが主流となる
  • 電子ピアノは音量、強弱の調節ができない
  • アナログ音源
  • 鍵盤へのタッチで強弱がつけられる
  • 音色がアコースティックピアノに近くなっている
作曲家 バロック音楽
  • ヴィヴァルディ(1677-1741)
  • J.Sバッハ(1685-1750)
  • ヘンデル(1685-1759)
古典派
  • モーツァルト(1756-1791)
古典派
  • べートーヴェン(1770-1827)
ロマン派
  • シューベルト(1797-1828)
古典派
  • ショパン(1810-1849)
  • リスト(1811-1886)
  • ブラームス(1833-1897)
近・現代
ドビュッシー(1862-1918)
近・現代
ストラヴィンスキー(1882-1971)
 

それでは順を追って解説していきましょう!

【18世紀】ピアノの原型を作った人物とは?

【18世紀】ピアノの原型を作った人物とは?

引用:ニューヨークメトロポリタン美術館

ピアノの原型とされる楽器は『クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ』といいます。
1709年、イタリアの富豪メディチ家に仕えていた楽器制作家クリストフォリによって発明されました。
当時主流だったチェンバロは、音が小さく音の強弱がつけられないという欠点がありました。
クリストフォリは、ハンマーで弦を叩く仕組みにすることで、弱い音も強い音も出せる楽器を創り出しました。

楽器 音を出すしくみ 特徴
チェンバロ 鍵盤を押すとプレクトラムという爪が弦を弾いて音を出す 音が小さい 強弱がつけられない
クラヴィチェンバロ・コル・ ピアノ・エ・フォルテ 弦をハンマーで叩いて音を出す 強弱がつけられる 表現豊かな演奏が可能

クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ』とは、強い音も弱い音も出せるチェンバロ、という意味です。 現在のピアノの語源はこの楽器に由来します。

ピアノの前身となった楽器2種類とは?

ピアノの前身となった楽器2種類とは?

それでは、ピアノの前身となった楽器の歴史からみていきましょう。

クラヴィコード

14世紀頃、ピアノの前身、クラヴィコードが発明されました。
クラヴィコードは、タンジェントという金具を弦に突き上げて音を出す楽器です。

クラヴィコードの特徴

  • 台に置いたりテーブルに置いたりし使用
  • 音量が小さい
  • 4~6オクターブ
  • ビブラートがかけられる

小型で音量がでない楽器であったため、家庭用として使われていました。

ハープシコード

イギリスではハープシコードですが、ドイツではチェンバロと呼ばれています。

ハープシコードの特徴

  • ハープのような音
  • 撥弦楽器
  • 強弱はつけられない
  • 調律がくるいやすい
  • 鍵盤が2段になっているものもある

ハープシコードは鍵盤を押すと金具が弦を弾くことで音が出ます。

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ピアノの形が完成するまでの歴史

ピアノの形が完成するまでの歴史

18世紀半ばの産業革命によって、ピアノの歴史にも変化の波がきました。

ピアノの進化

  • フェルトのハンマーによって音が安定
  • 低音を響かせるための弦を太くした
  • 交叉弦の使用
  • 82鍵の音域

産業革命による工業の発達により、太い弦やそれを支える鉄骨などが製造されるようになり、ピアノとしての形は完成しました。
その後は品質を向上させるための改良が主流となっています。
産業革命前は、ピアノは一台一台手作りのため高価で貴族の楽器でしたが、産業革命後は、製造技術の向上によってたくさん作られるようになり、一般家庭にも広まりました。

当時のピアノの種類は3つあります。

  • スクエアピアノ
  • グランドピアノ
  • アップライトピアノ

それぞれのピアノの歴史をみていきましょう。

スクエアピアノの歴史

スクエアピアノとは、長方形のピアノです。
イギリスでクラヴィコードとピアノのハンマーを組み合わせて作られました。
弦を太くしたり、フレームに鉄を使うなどの改良が行われ、ホールでの演奏が可能なほどに音量も大きくなりました。
特に交叉弦という弦の張り方が発明されたことで、ピアノがさらに進化をとげています。
交叉弦とは、高音域の弦と低音域の弦を斜めに交叉させて張る手法のことです。
1855年、アメリカのスタインウェイ社が開発しスクエアピアノに採用されました。

平行弦 交叉弦
弦の状態 まっすぐ平行に弦が張られている 高音と低音の弦を斜めに交叉させて張られていることで、
バランスがとりやすく、弦の張りを強くできる
  • 音域が聞き取りやすい
  • 音が濁ることなく演奏できる
  • 響きや音色が豊か
  • 弦が交叉することで調律していないと濁ることがある

このような改良により、ピアノはよりコンサートホールでも演奏できる楽器へと進化していきます。
一方デメリットは、音や振動が周囲に伝わりやすいことです。
対策として、防音対策が必要になります。
また、広い設置スペースが必要なため、マンションやアパートの場合は置く場所を考えて決める必要があります。

グランドピアノの歴史

ホールでの演奏を可能にしたのが、グランドピアノです。
19世紀に入るとロマン派といわれる音楽が主流となり、素早い連打や装飾音を表現できるピアノが求められるようになりました。
グランドピアノはハンマーが水平な弦を上から叩くので、素早い連打やトリルのような装飾音もなめらかに弾けるようになっています。

グランドピアノの特徴

  • なめらかで伸びのある音がでる
  • 素早い連打やトリルの表現がしやすい
  • 和音が濁らずに聞こえる
  • 音にいろいろな表情がつけやすい

室内用として始まったピアノはコンサートホールやオーケストラとの協奏曲でも演奏できる楽器となりました。

アップライトピアノの歴史

グランドピアノはスペースをとるため、一般家庭向きではありませんでした。
そこで、省スペースでもピアノが置けるように開発されたものが、アップライトピアノです。

アップライトピアノの前身ジラフピアノとキャビネットピアノ

アップライトピアノの歴史

引用:民間音楽博物館

ジラフピアノやキャビネットピアノはグランドピアノの弦をそのまま垂直に配置した形のピアノであり、キリンのように高さがあるためこの名がついたといわれています。
グランドピアノの弦をそのまま垂直にしたため、弦の背後からハンマーが叩く構造になっていました。

コテージピアノ

ジラフピアノやキャビネットピアノの高さを小型化する改良が加えられていき、1811年にロバート・ウォルナムによって誕生したのがコテージピアノです。
交叉弦を下向きに張り、ハンマーも下部にとりつけることで小型化に成功しています。

アップライトピアノへ進化

コテージピアノはグランドピアノの弦をそのまま下部に配置して小型化をしていましたが、1840年前後には、現在とほぼ変わらないアップライトピアノが登場します。
弦の配置を工夫し、交叉弦を上向きに張りハンマーのアクション部分を上部に設置することで、現在のアップライトピアノが完成しました。
同時に、それまで家庭用として普及していたスクエアピアノは姿を消していきました。

【1823年】日本のピアノの歴史が始まる

【1823年】日本のピアノの歴史が始まる

引用:熊谷美術館

1823年、ドイツ人のシーボルトが日本に、スクエアピアノを持ってきました。
これが、日本にピアノが上陸したはじまりです。
シーボルトは医師でしたが、ピアノで作曲もしていたそうです。
シーボルトは帰国に際して、親しくなった熊谷五右衛門義比(くまやごえもんよしかず)にスクエアピアノを贈りました。
1955年、熊谷家の土蔵よりシーボルトのピアノが発見され、現在は熊谷美術館で一般公開されています。

日本の国産ピアノ1号はアップライトピアノ

日本で本格的にピアノがつくられたのは、1900年のこと。
ヤマハがアップライトピアノを製造しました。
1902年には、グランドピアノの製造も開始し、1907年には年間600台のピアノを製造しています。
戦争で一時製造が中断しましたが、戦後、教育科目として音楽が組みこまれるようになり、ピアノの製造がさかんになっていきました。

現在、日本のピアノは高品質なピアノとして世界で愛用されています。

電子ピアノの誕生から現在までの歴史

電子ピアノの誕生から現在までの歴史

最近は電子ピアノが広く普及するようになりました。 電子ピアノの歴史をみていきましょう。

電子ピアノの初めはアメリカ

電子ピアノは、アメリカの「アレル・オルガン・カンパニー」が1960年代に製造した「RMIエレクトラピアノ」が最初といわれています。

RMIエレクトラピアノの特徴

  • 強弱がつけられない
  • 音量が変えられない

表現豊かな楽器にした日本製電子ピアノの歴史

電子ピアノの表現を豊かにしたのは、日本のローランド社です。
1973年、最初の国産の電子ピアノEPI-10を発売した頃は、まだ強弱がつけられない電子ピアノでした。
しかし、1974年には、世界初のタッチセンス付きピアノEPI-30を発売。
鍵盤にタッチする強さによって、強弱がつけられるという画期的な電子ピアノでした。
それからは、各メーカーで電子ピアノが製造され、1981年には音源がデジタル化されました。
加えて音色もアコースティックピアノに近い音色になりました。

まとめ|ピアノの歴史は進化の歴史

ピアノの原型を作ったのはイタリアの楽器製作家のクリストフォリ。
ピアノは、バロック音楽から古典派、ロマン派と時代の音楽とともに改良を繰り返されてきました。
産業革命によってピアノは一般家庭でも楽しめる楽器となり、コンサートやオーケストラ、学校など、それぞれの用途に応じて形も変化しています。

現在は電子ピアノの機能も充実してきており、音楽の発展とともにさらに進化していくことでしょう。
未来のピアノはどんな楽器になるのか、わくわくしますね。

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