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意外と知らない?ピアノの正式名称|意味や歴史も合わせて解説します!

Written by
2023.08.24
うらやまはるく
【執筆・監修】うらやまはるく

7歳からピアノ。13歳から打楽器。他にもテナーサックスや沖縄三線、合唱に挑戦し幅広く取り組む。現在は飲食店での接客調理、WEBライターや打楽器指導を行っている。 尚美ミュージックカレッジ専門学校打楽器専攻卒業。大阪芸術大学通信教育部音楽学科卒業。中学校・高等学校教諭一種免許(音楽)取得。

「ピアノの正式名称は何?」
「ピアノはいつ頃からあるの?」

ピアノの正式名称やピアノの歴史について気になっている人も多いかと思います。
この記事では、音楽大学で音楽史を学んだ経験をもつ筆者がピアノの知識を増やしたい人に向けて、ピアノの正式名称や誕生までの歴史を解説しています。

  • ピアノの正式名称は?名前の由来って知ってましたか?
  • ピアノとチェンバロって何が違うの?
  • ピアノ誕生までの歴史
この記事を読むことでピアノの正式名称やピアノの歴史を知り、どのような過程を経て現在のピアノになったのか理解できるようになるでしょう。

ピアノの正式名称は?名前の由来って知ってましたか?

ピアノの正式名称と由来

ピアノの正式名称を知っていますか?多くの人は「ピアノ」が正式名称だと思っているでしょう。 ここでは、ピアノの正式名称や名前の由来についてわかりやすく解説しています。

  • 正式名称は?
  • 名前の由来

ピアノの正式名称や名前の由来を知ることで、ピアノの原点を知ることができます。

正式名称とは?

ピアノの正式名称は、「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」です。
1709年にイタリア人の楽器製作家バルトロメオ・クリストフォリが発明しましたが、誰が名づけたのかは諸説あるため、ここではその中の2つを紹介します。

  • 発明したクリストフォリが「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」と名づけた説
  • シュピオーネ・マッフェイ侯爵が、クリストフォリが発明した楽器を文芸誌で「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」と公表し、世に広まったという説

どちらの諸説にしても正式名称が「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」に変わりはないようです。

名前の由来

「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」という正式名称は長くて驚いた方が多いと思いますが、正式名称には2つの意味が込められています。

クラヴィチェンバロ:大きなチェンバロ ピアノ・エ・フォルテ:小さい音と大きい音 「コル」は接続詞です。

2つの意味をつなげると、「小さい音と大きい音を出せる大きなチェンバロ」という意味です。
正式名称は時代とともに略されて「ピアノフォルテ」と呼ばれ、現在では略称「ピアノ」が一般的な呼び方になっています。

ピアノとチェンバロって何が違うの?

ピアノとチェンバロの違い

ピアノの正式名称「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」に「チェンバロ」というワードが入っていると気づく人もいるでしょう。
クリストフォリは「チェンバロに音の強弱をつけよう」と考えてピアノを発明したので、ピアノとチェンバロの関係性は深いといえます。
しかし、ピアノとチェンバロは何が違うのでしょうか。

ここではピアノとチェンバロの違いについて以下に解説しています。

  • チェンバロとは?
  • ピアノとチェンバロの関係性

ピアノとチェンバロの違いを理解し、ピアノが作られた背景も学んでいきましょう。

チェンバロとは?

チェンバロは15世紀頃にイタリアで誕生しました。別名「ハープシコード」「クラブサン」と呼ばれる場合もあります。
チェンバロは、横に張られた弦を手で弾いて演奏する「プサルテリウム」とオルガンの鍵盤を掛け合わせて発明したといわれています。
チェンバロの音色はピアノに比べて音は小さいですが、繊細で優美な音色です。
17〜18世紀、音楽史でいうバロック時代にチェンバロは最盛期を迎え、有名作曲家バッハにも好まれました。
バッハはチェンバロの名曲を生み出しており、以下2曲は聴いたことがある人も多いでしょう。

平均律クラヴィーア曲集 第1巻第1番ハ長調<プレリュード>

イタリア協奏曲 BWV971 第1楽章

ピアノとチェンバロの関係性

チェンバロは繊細で優美な音色で人々を魅了しました。
チェンバロはサロンやコンサートを通してヨーロッパ全土に普及し、バロック時代を支えた楽器といえるでしょう。
しかし、チェンバロは構造上音の強弱をつけられず表現に制限があったため、ピアノの登場により人気が奪われていきます。
ピアノの正式名称「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」が小さい音と大きい音を出せる大きいチェンバロを意味するように、ピアノはチェンバロより音が大きく強弱をつけることが可能でした。

ピアノとチェンバロの違い

ピアノとチェンバロは外観や仕組み、音色など異なる点がいくつかあります。
ここでは、ピアノとチェンバロの違いを表にまとめています。

ピアノ チェンバロ
鍵盤の色 手前が白色、奥が黒色 ピアノの逆で手前が黒色、奥が白色
鍵盤の段数 1段 2段(1段のものもあり)
音色 鐘の音を優しくした感じ ギターや琴に近い音
音が出る仕組み
  1. 鍵盤押す
  2. ハンマーで弦を下からたたく
  3. 音が出る
  1. 鍵盤押す
  2. 数ミリの爪が金属弦をはじく
  3. 音が出る
ペダル あり なし。 レジスターという機能により音色や音量の調整が可能。
奏法の違い 指や腕の重み、手首の動きで音の強弱をコントロールする 鍵盤が軽く、指先で弦に爪が掛かるのを感じながら弾く。 強弱をつけることはできない。
調律 半年〜1年で調律師に依頼。 毎日〜数日おきに調律が必要。 奏者自身で調律可能。
外観 黒色 絵で装飾

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ピアノ誕生までの歴史

ピアノ誕生までの歴史

ピアノは、現在のピアノに至るまでに何度も改良されてきました。
ここでは、ピアノの前身楽器の登場から現在のピアノが誕生するまでを解説しています。

  • ピアノの前身楽器
  • 18世紀前半
  • 18世紀後半
  • 19世紀

ピアノ誕生までの歴史を知ることで、ピアノについてより詳しく理解できるようになります。

ピアノの前身楽器

ピアノは、チェンバロ以外にもピアノの前身と呼ばれる楽器が存在していました。
ここではピアノの前身楽器「ダルシマー」と「クラヴィコード」について紹介します。

ダルシマー

ダルシマーは、11世紀頃に中近東からヨーロッパに伝わった楽器です。
ダルシマーは「Dolce」と「Melody」を合わせた言葉で、日本語に訳すと「甘い音色」という意味です。
台形の木箱に約70本の鉄の弦が張られた楽器で、専用のハンマーで弦をたたいて音を出します。
筆者がダルシマーの音を聴いた際の印象は、ギターの音に似ていて、ギターより甘いやわらかい音色だと感じました。癒しの音楽に合いそうな雰囲気です。
ダルシマーの音色はピアノには似ていませんが、音を出す仕組みがピアノに似ていることから、ピアノの前身といわれています。

クラヴィコード

クラヴィコードは14世紀に誕生し、ルネサンス期に最盛期を迎えた鍵盤楽器です。
クラヴィコードは音量がとても小さいので、コンサート会場で演奏するというよりは家庭用や練習用の鍵盤楽器として親しまれました。
また、音の強弱やビブラートをつけられる特徴があり、音の強弱を出せるところはピアノと共通点といえるでしょう。
音が出る仕組みは、鍵盤を押すとタンジェントという真ちゅうの棒が弦を押し上げて振動を起こし音を出します。
筆者がクラヴィコードの音色を聴いた際の印象は、チェンバロより音が小さく、優しくて可愛らしい音色だと感じました。
クラヴィコードはピアノと同じく音の強弱を出せて、外観も少し似ていることからピアノの前身といわれています。

18世紀前半

18世紀初頭、イタリア人のバルトロメオ・クリストフォリにより「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」が誕生します。
当時はチェンバロが鍵盤楽器の主流でしたが、音の強弱がつけられない難点がありました。
クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテは音の強弱はつけられるようになりましたが、チェンバロに近い音色で現在のピアノとは大きく異なります。
クリストフォリがクラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテを発明した後も何度も改良が重ねられていきました。
なかでもクリストフォリの仕事を受け継いだドイツ人のジルバーマンは、バッハに意見を求めながらピアノの改良を進めていきます。

18世紀後半

18世紀後半にはドイツ人のヨハン・アンドレアス・シュタインがジルバーマンの仕組みに改良を重ねていきます。
シュタインは連打が可能な仕組みを備え、軽快なタッチと明るく粒がそろった音が特徴的なドイツ式のアクションを作りました。
同時期には、イギリス人のヨハネス・ツンペがクラヴィコードにハンマーアクションを備え、イギリス式のアクションを作りました。
18世紀終わり頃にはジョン・ブロードウッドがイギリス式アクションに改良を加え、フレームを強化したピアノを製作していきます。

19世紀から20世紀

ピアノは19世紀までは一台ずつ手作りをしていましたが、19世紀からは工業生産に変化していきました。
また、弦が真ちゅうからミュージックワイヤーに変わったり、フレームに頑丈な鉄骨が使われたりなど改良が重ねられ、現在のピアノに近づいていきました。
19世紀半ばには、ピアノのメカニズムは現在のピアノとほぼ同じになったといわれています。
第一次世界大戦後はピアノの音域が88鍵になり、現在のピアノに至ります。

ピアノ年表

ピアノはピアノの前身になる楽器から改良し続け、現在のピアノに至ります。
ここでは、ピアノ史を表にまとめました。
音楽史も載せているので、より深く歴史を理解できるでしょう。

年代 ピアノ史 音楽史
18世紀以前
  • 11世紀頃、ダルシマーが中近東からヨーロッパに伝わる
  • 14世紀、クラヴィコード誕生
  • 15世紀、チェンバロ誕生
  • 声楽(宗教曲)がメイン
  • フランドル楽派やローマ楽派が ルネサンス音楽に影響を与える
18世紀前半 (1600~1750年)
  • 17~18世紀、チェンバロ最盛期
  • バルトロメオ・クリストフォリが クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテを発明
  • ジルバーマンがピアノを改良
  • 器楽曲が急速に発達
  • 貴族や教会向けで、華やかな音楽
  • バッハ、ヘンデルなどの作曲家が活躍
18世紀後半 (1750~1800年)
  • ヨハン・アンドレアス・シュタインが ドイツ式アクションを完成させる
  • ヨハネス・ツンペがイギリス式のアクションを完成、 スクエアピアノを製作
  • 和声音楽が中心
  • ソナタ形式が確率
  • 交響曲や協奏曲が多数作曲される
  • ハイドン、モーツァルト、 ベートーヴェンなどの作曲家が活躍
19世紀 (1800~1900年)
  • ピアノが手作りから工業生産に変化
  • ピアノのメカニズムは現在のピアノとほぼ同じ
  • 演奏環境が変化し、音量が求められるようになり、 改良が進む
  • ピアノの発達で、ピアノ作品が多く作曲された
  • 標題音楽が誕生
  • ショパン、シューマン、 チャイコフスキーなどの作曲家が活躍
20世紀 (1900~1945年頃)
  • ピアノの音域が88鍵になる
  • ピアノ本体の大きさとともにメカニックな部分も大きくなる
  • さまざまな個性をもった音楽が誕生
  • ラフマニノフやシェーンベルク、 ストラヴィンスキーなどの作曲家が活躍

【おまけ】グランドピアノの正式名称は知ってますか?

グランドピアノの正式名称

グランドピアノの正式名称は「ピアノ・フォルテ」といいます。
意味は「弱い音と強い音」で、自由自在に音の強弱を表現できる楽器として名づけられました。
普段、ピアノと呼ぶ人のなかにはピアノ略称はなぜ「Pf.」なのかと疑問に思っていた人もいるかと思いますが、ピアノ・フォルテの略称なら納得できるでしょう。

まとめ

まとめ

この記事では、ピアノの正式名称や現在のピアノが誕生するまでの歴史を解説してきました。

  ピアノの正式名称と由来
  • ピアノの正式名称は?名前の由来って知ってましたか?
  • ピアノとチェンバロって何が違うの?
  • ピアノ誕生までの歴史

ピアノの歴史 ピアノはさまざまな楽器を通して改良を重ね、現在のピアノに至りました。
  • ダルシマーやクラヴィコード、チェンバロといった楽器がピアノの前身楽器
  • 音の強弱が出し、表現の幅を広げたいとバルトロメオ・クリストフォリがクラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテを開発
  • さまざまな楽器製作者がピアノを改良していく
  • 19世紀には現在のピアノと同じメカニズムが完成
  • 第一次世界大戦後には鍵盤数が現在のピアノと同じ88鍵になる

ピアノの正式名称や由来、歴史を通してどのような過程を経て現在のピアノになったのか理解できたと思います。
今後も時代により変化していくピアノに注目していきましょう!

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