ピアノ歴20年以上のWEBライターです。コンクールや受験、さらにピアノ指導経験を活かした記事作成を行っています。
目次
ピアノは多くの音を同時に響かせられるので、一人でもダイナミックで華やかな演奏が可能です。
その華やかさを生み出している和音は、ピアノ曲において重要な役割を担っています。
しかし、ピアノで和音を弾くとなると複数の指を同時に使うため、音をバランスよく響かせることが難しいです。
ピアノ経験者の私も、指の弱さが音に出てしまい和音がきれいに弾けなかった時期がありました。
今回の記事では、ピアノで和音をきれいに弾くためのコツや効果的な練習方法とおすすめの練習曲をご紹介します。
和音とは?
まずは、ピアノの練習で得られる効果を以下の10点からお伝えします。
ピアノの和音とは、高さが違う2つ以上の音が同時に鳴っている音のことです。
例えば、「ド-ミ-ソ」の音を一音ずつではなく同時に弾いた時、複数の音が響いている状態を和音と呼びます。
さらに、低音または最高音から一音ずつ重ねていくことを分散和音(アルペジオ)と呼び、あらゆる楽曲に使われています。
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和音の役割と必要性
このように和音は、楽曲構成において曲の雰囲気を決定づける重要な役割を担っています。
トニック | ドミナント | サブドミナント |
---|---|---|
安定感のある響きで、 和音進行の中心的な役割を 担います。 【例】 曲の冒頭部分や最後に 用いられます。 |
トニックに戻ろうとする性質が 強い和音がドミナントです。 やや不安定な響きですが、 終止音に導く重要な役割を 担います。 【例】 曲の終盤に現れることが 多いです。 |
曲調に開放感を与えたり、 転調に導く性質がある和音を サブドミナントと呼びます。 【例】 曲中で転調したり、元の 調に戻る時に用いられます。 |
【和音の種類】一覧と特徴
ここからは、和音の種類を3つに分けて解説していきます。
- 協和音・不協和音
- 主要三和音
- 三和音(長・短・減・増)
協和音・不協和音
音がバランスよく響き、聞き心地がよい和音を「協和音」と呼び、音の調和が不自然で不快に感じてしまう和音が「不協和音」です。
この2つをバランスよく融合させることで、曲の世界観や印象が決まります。
ちなみに、バッハやヘンデルなどのバロック音楽からショパンやリストといったロマン派までは、協和音を主体とする作品が多いです。
一方、近現代になると、プロコフィエフのピアノソナタや協奏曲のような不協和音を多用する楽曲も作られています。
主要三和音
三和音とは、3つの音が3度ずつ重なっている和音のことで、一番下の音を根音、2つ目の音を第三音、最高音を第五音と呼びます。
3度は、ピアノの鍵盤で「ドとミ」や「レとファ」のような位置関係にあることです。
【主要三和音の名称と構成】
名称 | 構成 |
---|---|
主三和音(トニック) | 根音が音階の主音になっている和音。 |
属和音(ドミナント) | 根音が属音(主音の5度上の音)の和音。 |
下属和音(サブドミナント) | 根音が下属音(主音の4度上の音)の和音。 |
三和音(長・短・減・増)
3つの音で構成される和音を三和音と呼び、和音の構造上の違いや響きによって4つに分類されます。
【三和音の名称と特徴・構成】
名称 | 特徴 | 構成 |
---|---|---|
長三和音 | 長調のような明るい響き | 長3度+短3度 |
短三和音 | 短調のように暗い響き | 短3度+長3度 |
減三和音 | 不協和音のような響き | 短3度+短3度 |
増三和音 | 開放感のある響き | 長3度+長3度 |
練習を始める前に意識したいこと
ピアノで和音の練習を始める前に、きれいな和音とはどのような響きなのかをイメージしてみましょう。
自分で出したい音色を想像しながら練習すると、より和音の響きにも敏感になります。
ここでは、美しい和音の例を3つ挙げてみます。
- 音のバランスがよい
- 重厚感のある響き
- 音が抜けたり飛び出していない
この3つをもとに、ピアノで和音の練習をする際のポイントを解説していきますね。
正しい姿勢と手の形
肘とピアノの鍵盤がほぼ水平な状態になると、指に負担をかけず弾きやすい高さと言えます。
1の指(親指)が横になりすぎていないか、3の指先が反っていないか、5の指(小指)がしっかり鍵盤にのっているかを確認してみてください。
鍵盤のタッチと力の配分
手の形が整ったら、実際に和音を弾いてみましょう。
鍵盤のタッチは、押し込むのではなく指先でやさしくつかむイメージです。
最初は、すべての音が同じ音量で響くように均等に練習すると良いですね。
できるだけ力配分を均一にして、音がバランスよく鳴っているか確認しながら練習を続けると、いろいろなパターンに対応できるようになりますよ。
基本編|和音が上手に弾けるようになるコツ
和音の弾き方の基本として、2つのポイントを挙げます。
- すべての音が均等に響いている
- 音が抜けたりばらつきがない
ブルグミュラー18の練習曲から「森での目ざめ」を例に解説していきますね。
この曲は、和音のスタッカートが左右交互に出てくるので、練習曲としておすすめです。
すべての音が均等に響いている
冒頭の左手和音は、2分音符で重厚感のある和音です。
ペダルを使って、十分な長さで響かせて弾くと良いですね。
黒鍵も使うので、手の形が傾きすぎないように注意してください。
引用元:ブルグミュラー18の練習曲(全音楽譜出版社)
5小節目からは左手の和音をスタッカートで弾きますが、手の形を保つために指を鍵盤から離さずに弾いてみましょう。
鍵盤を叩くのではなく、指先でサッと何かをつかむ動作をイメージしてみてください。
引用元:ブルグミュラー18の練習曲(全音楽譜出版社)
13小節からは右手で和音を弾きますが、弾き方のコツは左手と同じです。
ただし、左手よりも音域が広いので、指を広げてよいポジションで弾くことがポイント。
全体的に和音のスタッカートが続く曲なので、打鍵のスピードを揃えて音を均等に響かせると良いですね。
音が抜けたりばらつきがない
16小節〜20小節の右手和音は音が次々と変化するので、ずれないように弾けるとかっこいいですね。
最初に各和音の指使いや手のポジションを決めて、ゆっくり弾いてみましょう。
そして、32小節からは右手和音がオクターブの音域まで広がります。
音域が広がると真ん中の音が抜けやすいので、鍵盤の下までしっかりと弾くことを意識してみてください。
最後の右手和音には、アルペジオ記号と極めて強い「sf(スフォルツァンド)」という指示があるので、堂々と弾くと良いです。
応用編|和音が上手に弾けるようになるコツ
基本的な和音の弾き方を習得したら、次はさまざまなパターンの和音奏法も練習してみましょう。
- 和音をメロディックに弾く
- アルペジオ奏法で和音を弾く
ここからは、練習曲を例に挙げながら各ポイントを解説していきます。
和音をメロディックに弾く
モシュコフスキー20の小練習曲から第5番変ロ長調を使って、和音をメロディのように弾くコツを解説します。
引用元:モシュコフスキー20の小練習曲(全音楽譜出版社)
この曲は、左手が終始16分音符で動き続けるので、右手和音を安定させることも重要なポイントです。
5小節以降の右手和音にスラー(音をつないで弾く)がついています。
このような場合、和音の一番上の音を目立たせて弾くと良いです。
最初に上の音だけを弾いてメロディラインを歌ってみると、より聞き取れると思いますよ。
9小節からは旋律と和音を弾き分けますが、ここでも最高音を強く出すことを意識して弾きましょう。
小指が反りすぎないように、第1関節でしっかりと支えられると音も安定します。
アルペジオ奏法で和音を弾く
ここでは、クラーマー・ビューロー60の練習曲から第19番と第20番を例に解説しますね。
引用元:クラーマービューロー60の練習曲(音楽之友社)
19番ニ短調は、左手和音をアルペジオ奏法で弾く練習曲です。
右手の32分音符に気を取られ左手がおろそかになりがちな曲。
ポイントは、アルペジオの和音と右手を合わせるタイミングです。
この曲の場合、左手のアルペジオを先に弾いて最高音と右手の1拍目を合わせると良いでしょう。
左手はいきなりアルペジオで弾かず、和音で捉えて指使いや手のポジションを覚えると効果的です。
続く20番ニ長調は、右手和音をアルペジオで弾く練習曲になります。
21小節〜23小節に出てくる8分音符の和音は、リズムを崩さないように素早いタッチで弾くと良いです。
引用元:クラーマービューロー60の練習曲(音楽之友社)
右手の小指に向かって手首の重みをのせていくイメージで、一音ずつ重ねる練習は効果があります。
よくある質問
ここからは、ピアノで和音がきれいに弾けない原因や練習方法をまとめています。
音がずれる?その対処法とは?
和音を弾いた時に音がずれてしまう原因は、鍵盤を捉える指が均等に動いていないからです。
例えば、小指が遅れて打鍵したり、親指が先に動いてしまうなど。
まずは、どの指に問題があるのかを見極めて、弱い指を強化する練習を試してみてください。
例として、ド-ミ-ソの和音でソの打鍵が遅れるとしましょう。
この場合、鍵盤でドとミを抑えたまま、ソを弾く小指だけを上下に動かします。
鍵盤の下までしっかりと捉えられるまで繰り返し、慣れてきたら再び和音を弾いて音がずれていないか確認してみましょう。
この練習は、各指の独立や強化に効果があります。
ただし、指を傷めないように適度な回数で練習してくださいね。
和音を単音に変えて練習する方法は効果的?
和音を弾く練習として、アルペジオ(分散和音)のように一音ずつ重ねていく方法も効果的です。
例えば、一番下の音から順に弾いて和音にするなど。
さらに、打鍵が弱い指だけを単音に変えて弾き、指先の瞬発力を鍛える練習方法も効果があります。
和音のスタッカートが上手に弾けない時はどうする?
和音にスタッカートが書かれている場合は、歯切れのよい軽快なタッチで弾かなければなりません。
とはいえ、和音のように複数の音を同じタッチで弾くことは意外と難しいのです。
そこで、まずは一音ずつスタッカートのタッチで弾き、徐々に音を重ねる練習を試してください。
例えば、ド-ミ-ソの和音だと、「最初にドの音だけをスタッカートで弾く→次にドとミ→最後はド-ミ-ソ」という感じです。
さらに、弾く順番や指を変えて弾くなど、いろいろなパターンに変化させるとより効果的ですよ。
まとめ〜和音の弾き方をマスターして演奏力アップ〜
今回は、ピアノで和音を上手に弾くコツや練習曲をご紹介してきました。
簡単そうに思える和音奏法ですが、楽曲によっては音のバランスやタイミングが難しく、弾き方も工夫しなければなりません。
しかし、和音はピアノの演奏を彩る大切な要素でもあるので、いろいろな弾き方を練習してみてくださいね。
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