ピアノ歴20年以上のWEBライターです。コンクールや受験、さらにピアノ指導経験を活かした記事作成を行っています。
目次
- 脱力とは?
- 脱力が上手にできない理由は?
- 椅子の高さが合っていない
- ピアノとの距離感が不安定
- 指が極端に弱い
- よくある間違った脱力の捉え方!
- タイミング
- 力を抜く部分
- 手首や肘の使い方
- ピアノで力を抜くコツは?
- 脱力を意識するためにはどうすれば良い?
- 親指の力を抜く
- 肩を起点として上腕を意識する
- ピアノの脱力の具体的な練習方法は?
- お手玉を使った練習
- 指先の瞬発力を鍛える
- 手の握力を鍛える
- 腕や手首の柔軟性を強化
- ピアノで実践練習
- ゆっくり弾く
- リズムを変える
- スタッカートで弾く
- 脱力に使えるグッズをご紹介!
- バスティンお手玉
- バランスボール(弾力がある素材)
- ピアノトレーニングボード(御木本メソッド)
- ピアノフィンガートレーナー(Generic1ペア)
- まとめ〜脱力はピアノ上達への鍵になる〜
ピアノ学習者にとって永遠の課題と言っても過言ではない脱力。
幼少期からピアノを習ってきた私も、毎回のレッスンで必ず1回は「脱力して!」と言われていました。
とはいえ、手首や腕に無駄な力を入れずにピアノを弾くことは、簡単そうで実は難しいですよね。
しかし、上手に脱力できると、練習曲や規模が大きい楽曲も最後まで疲れずに弾けるようになります。そのため、ピアノの上達に脱力は避けて通れない課題と言われるのです。
そこで今回の記事では、ピアノの脱力について練習方法や注意点、おすすめのトレーニンググッズをご紹介します。
脱力とは?
脱力とは、その名の通り力を抜くことで、ピアノ演奏においても重要なポイントと言えます。
腕の力だけでピアノを弾こうとすると、すぐに疲れたり痛みが現れて怪我のリスクが高くなります。
そこで大切なのが、脱力です。とはいえ、まったく力を使わずにピアノを弾くことはできません。
つまり、無駄な力を入れず、いかに手首や腕、指先をリラックスさせるかがポイントです。
そして、必要な時に適度な力を使うことで脱力している状態になります。
矛盾しているようですが、まずは脱力について正しく理解することが大切ですね。
ピアノを弾く時には、上手に脱力することで高度なテクニックを習得したり、豊かな音量が出せるようになります。
脱力が上手にできない理由は?
ピアノを弾く時に脱力が上手にできない主な理由は、3つあります。
いずれも、基本的な姿勢に関することなので、悪い癖がつく前に確認してみてくださいね。
- 椅子の高さが合っていない
- ピアノとの距離感が不安定
- 指が極端に弱い
椅子の高さが合っていない
まず、ピアノの前に座って椅子の高さを見てみましょう。
脱力が上手にできないのは、手首や肘の高さが合っていないからだと考えられます。
つまり、椅子の高さから見直さなければなりません。
例えば、鍵盤に手を置いた時に肘が下がると、指先に余計な力が入ってしまいます。
一方で、肘が上がりすぎると、肩や上腕が強張って指先に重みが伝わりにくいです。
解決策としては、鍵盤と肘がほぼ水平になるように椅子の高さを調整してみてください。
肩・上腕・肘・手首・指先がリラックスできるように姿勢を整えることが、脱力を習得する第1歩と言えます。
ピアノとの距離感が不安定
自分の身体とピアノの距離感が不安定になると、鍵盤のタッチも不揃いになり上手に脱力ができなくなります。
例えば、ピアノの鍵盤から身体が離れすぎると、上腕から肘に無駄な力が加わりやすくなります。
腕が固まると、必然的に手首もガチガチになってしまいますね。
逆に鍵盤に近すぎると、肩が上がったり肘の動きが制限されます。
その結果、指先のタッチが不安定になり音もきれいに響きません。
指が極端に弱い
指先を支える関節や筋肉がしっかり鍛えられず、指そのものが弱いと脱力も上手にできません。
指の第1関節や腹の部分が反り返ってしまうと、鍵盤の奥に押し込もうと余計な力が加わります。
このように指を無理やり動かして弾くと、脱力はもちろん基本的な弾き方も習得できないので注意が必要です。
よくある間違った脱力の捉え方!
ピアノを弾く時に脱力を意識することは大切ですが、間違った捉え方をすると悪い癖がついてしまいます。
そして、1回ついた癖は直すのが難しいのです。
ここでは、脱力について誤解されやすいポイントを解説しますね。
タイミング
理想的な脱力のタイミングとは、ピアノの鍵盤を押す瞬間です。
鍵盤を下まで押したらすぐに力を抜き、余計なエネルギーを使わないことで音の強弱を繊細にコントロールできます。
しかし、指が鍵盤の下に達したあとも力を加えて脱力のタイミングを逃している人が多いのです。
打鍵したらすぐに指を離すイメージで、脱力のタイミングを覚えてみてください。
力を抜く部分
ピアノは、指だけではなく手首・腕・肘・足など全身を使って弾く楽器です。
そのため、身体のどの部分を脱力するのか判断が難しくなります。
例えば、ピアノの鍵盤を押す時は、手首や指先の脱力を意識しますよね。
この時、指先が脱力ではなく支えを失っていませんか?
つまり、力を抜きすぎるときちんと打鍵できないので、脱力とは言えないのです。
手首や肘の使い方
「力を抜いて」と言われ、手首や肘をクネクネ動かしてしまうケースも見られます。
例えば、ピアノの鍵盤から指を離す時に手首を持ち上げるような動作です。
確かに指先は脱力できていますが、上腕に力が入ってしまいますよね。
この状態では、正しい脱力とは言えないのです。
また、肘を身体から離すことを意識しすぎて、肘を外側に投げ出すような動作も脱力の妨げになります。
ピアノで力を抜くコツは?
ここまで、ピアノにおける脱力とは完全に力を抜くことではないとお伝えしました。
言い換えると、肩や上腕の重みを指先に集めることが理想的な脱力と言えます。
脱力を意識するためにはどうすれば良い?
まずは、ピアノを使って脱力状態を体感することから始めましょう。
例えば、右手でピアノを弾いている時に、弾いていない左手で右手を持ち上げます。
その後、支えていた左手を離してみてください。
すると右手はどうなるでしょうか?脱力している状態であれば、そのまま下にストンと落下します。
一方、右手が持ち上げた高さで止まっていると、完全に力が入っていることになり脱力状態ではありません。
この状態で再びピアノを弾いたら、おそらく指もガチガチになって弾けないと思います。
このように、脱力とはどのような状態か体感してみることが重要です。
親指の力を抜く
手首に最も近い親指は、ピアノを弾く上でも重要なポジションと言えます。
そのため、親指の脱力を重点的に意識すると、手首や肘にも余計な力が入りません。
さらに、スケールやアルペジオをなめらかに弾くためには、親指の脱力が大きく関わってきます。
また、親指が固まると音色も変わってしまい、きれいな音で弾くことも難しいです。
ピアノ練習の前後に親指の付け根をもみほぐしたり、簡単なストレッチをして疲れを残さないようにケアしてくださいね。
肩を起点として上腕を意識する
伝わりにくいかもしれませんが、ピアノを弾く時に肩が上がっていると、その時点で脱力できていない状態と言えます。
つまり、肩から上腕にかけて余計な力を入れず、正しい姿勢でピアノに向かい合っているかが重要なのです。
そして、鍵盤に手を置いても肩や上腕がリラックスしていれば、脱力に近い状態と言えるでしょう。
ピアノの脱力の具体的な練習方法は?
ここからは、ピアノの脱力を習得するための練習方法を2つご紹介します。
お手玉を使った練習
腕や手の脱力を覚えるトレーニングには、ピアノ練習用のお手玉を使うと効果的です。
お手玉の使い方によって、3つの効果が期待されています。
- 指先の瞬発力を鍛える
- 手の握力を鍛える
- 肩甲骨から手首の柔軟性を強化
では、お手玉の使い方を具体的に解説しますね。
ピアノがない場所でも実践できるので、試してみてください。
指先の瞬発力を鍛える
まずは、お手玉を指先で掴んで持ち上げてみましょう。
この時、どの部分に力が入っているか確認すると、脱力の感覚を覚えやすくなりますよ。
そして、指をお手玉から一瞬離して、すぐにキャッチします。
指先だけでしっかりお手玉が掴めたら、何度か繰り返してください。
すばやくお手玉を掴むことで指先の瞬発力を鍛え、テンポが速いピアノ曲を軽快に弾くスキルが身についてきます。
手の握力を鍛える
机の上で、お手玉を指先ではなく手のひら全体で包み込むように持ち上げてみましょう。
机から約10cm持ち上げたら一度お手玉を離し、再び手のひらで包み込んでください。
この動作を繰り返して手の握力を鍛えると、ピアノを弾く時の手の形を整えることができます。
正しい手の形で弾けると、手首に余計な力が入らなくなり脱力の習得につながるのです。
腕や手首の柔軟性を強化
まず、手のひらを上に向けてお手玉をのせます。
その状態から少し手を傾けて、お手玉をすばやく反対の手に投げてみましょう。
お手玉を水平に移動させるイメージです。
そして、お手玉を投げた時にフッと手首の力を抜くと、腕もリラックスしていると思います。
この練習を左右交互に続けていくと、手首から腕の柔軟性が鍛えられ脱力の習得に近づきます。
ピアノで実践練習
ピアノ教本の王道であるハノンを使って、脱力しながら弾く練習をご紹介しますね。
ここでは、第1番を例に挙げます。
引用元:ハノン(全音楽譜出版社)
ゆっくり弾く
まずは一音ずつゆっくり、打鍵したあと指先の力が抜ける感覚を確かめながら弾いてみましょう。
この時、弾かない指が突っ張っていると、十分に脱力できていない状態と言えます。
一音弾く度に、打鍵している指や肘、そして肩が力んでいないか確認していきます。
気が遠くなるような練習ですが、定期的に脱力を見直すためにも試してほしいですね。
リズムを変える
続いて、リズムを変えて弾く練習です。
全音楽譜出版社のハノンに掲載されているリズム変奏パターンも素晴らしい練習方法ですが、今回はオリジナルのパターンをご紹介しますね。
休符を交えたリズム練習で、伸ばす音と短く切る音の違いをはっきり弾き分けることがポイントです。
四分音符は指の重みをのせて、短い八分音符は指で鍵盤を突き離すようなイメージ。
このように、異なるタッチで繰り返し弾くと、脱力するタイミングが理解できるようになります。
スタッカートで弾く
引用元:ハノン(全音楽譜出版社)
音を短く切るスタッカート奏法は、指先の瞬発力と手首の上手な脱力がポイントになります。
ここでも一音ずつゆっくり弾き、少し大げさに指を飛ばしてみましょう。
慣れてきたら、上記楽譜のようにパターンを変えての練習も取り入れるとより効果的です。
脱力していれば、跳ねた手は重力によってそのまま落ちてきます。
また、あえて余計な力を入れてみると、脱力状態との違いを実感できるので試してみてください。
脱力に使えるグッズをご紹介!
ここからは、ピアノの脱力を習得するために効果的なトレーニンググッズをご紹介します。
市販されているグッズの他、手作りできるアイテムもありますよ。
バスティンお手玉
ピアノ教本でおなじみのバスティンが推奨するお手玉です。使い方は、練習方法でご紹介しています。
バスティンのお手玉は、通常のお手玉よりも大きく重さも約250g。
通販サイトで販売されていますが、手作りも可能ですよ。
バランスボール(弾力がある素材)
脱力をイメージするために、一般的なストレッチ用のバランスボールまたは弾力性のあるボールを使うと効果があります。
さらに、メトロノームや音楽に合わせて行うとリズム感も身について一石二鳥です。
使い方はとてもシンプルで、ボールの上で手を弾ませるだけです。
手は完全に力を抜いた状態で、ボールの弾力に任せてみましょう。
何度も跳ね返されると、次第に腕や肘の力が抜けてくると思います。
この感覚を覚えることで、ピアノを弾く時の脱力もイメージしやすくなります。
ピアノトレーニングボード(御木本メソッド)
多くのピアノ講師の方がおすすめしているピアノトレーニングボードは、主に指の独立や強化を目的としたグッズです。
実は私も使っていて、ピアノが練習できない場所で大活躍しました。
手首や上腕で上手に脱力するには、指先の瞬発力や第1関節を鍛えることが重要です。
そこで、トレーニングボードを使った強化練習をおすすめします。
【トレーニングボード使い方参考動画】
ピアノフィンガートレーナー(Generic1ペア)
指の筋力を鍛えるフィンガートレーナーも、脱力の習得に効果的です。
指先の強化とともに柔軟性を鍛えることで、脱力のイメージを掴む効果が期待されています。
フィンガートレーナーは、柔らかい素材で指先がフィットする形状になっています。
また、弾力性も備えているので、各指の強化に最適です。
慣れてきたら、指を器具から離す時の脱力を意識してみてください。
指先の脱力がどのような感覚なのかを覚えると、実際にピアノを弾く時に使えるようになります。
まとめ〜脱力はピアノ上達への鍵になる〜
今回は、ピアノにおける脱力について詳しく解説してきました。
無駄な力を抜いてピアノを弾くことは、頭で分かっていても実際は難しいです。
しかし、脱力を習得すると、怪我の予防はもちろんピアノの音色も変わってきます。
時間をかけてじっくり練習を続けて、理想的な脱力を身につけていきましょう。